Re:トモセラピーについて教えてください

トモセラピーは「従来のIMRTより高精度で安全性が高いのだろうか?」という質問が、前立腺癌に関するメーリングリストに投稿されていました。なぜそう思ったのか、その情報ソースが気になり調べてみました。
[関連記事] トモセラピーかダヴィンチか?

投稿は次のようなものです

トモセラピーについて、体験された方、検討された方は教えてください。
通常のIMRTでは、一度位置決めをしたらそのまま終わりまでその位置のままで照射を繰り返すが、トモセラピーでは、照射の都度、位置決め修正を行うので、他の臓器への悪影響を減らせるということのようです。※
私は、従来のIMRTよりも安全性が高いのであれば、この治療を受けようかと思いますが、どんなものか情報をおもちのかたは是非教えてください。
  <質問された方に転載を許諾していただきその抜粋を掲載>

トモセラピーの動作

まず、トモセラピーとはどんなものが、これを見ていただきましょう。

Accuray社による、トモセラピーを説明するビデオ


AccurayInternational 2015/06/04 に公開

CTのようなボディーに照射部が内蔵

放射線を長い矩形に整形し、照射部(Ring gantry)が体のまわりをくるくると回転しながら照射しますが、同時に寝台は照射システムの輪の中に吸い込まれるように入って行きます。

AccurayInternational 2015/06/04
ビデオでは背骨に照射していることからわかるように、非常に大きな照射野が一度で得られることが最大の特徴です。(TomoHelicalの動画を御覧ください、TomoDirectは関係しません)、美しい映像を見ていると、どんな病気でも根治させてしまうように感じますね。

トモセラピーの特徴は

放射線を整形するのは「バイナリー・マルチリーフ・コリメータ」と呼ばれる装置で、まるで櫛のように一直線にリーフが並ぶ、その制御は単純にオープンかクローズで、これにより放射線を長い矩形に整形し回転照射させる。それと同時に照射中の寝台をシステムの奥に送り込むことで、スライスされた照射の合成により自在な照射野を作り出すことができる。

AccurayInternational 2015/06/04

トモセラピーの照射中の寝台の移動は見るものに凄さを感じさせるが、動作原理上必要だから移動しているにすぎない。これに対し通常のIMRT(及びVMAT)では照射野を長い矩形ではなく、ターゲットに合わせて自在な形に放射線を整形するマルチリーフ・コリメータであるため、照射中に寝台の移動させるという動作は必要はない。照射部を回転させながら、自在な形に放射線を整形するという複雑な動作での照射を実現している。


IMRTなど通常の外照射システムのコリメータ。トモセラピーのような長い矩形ではなく、自在な形に放射線を整形できる


およその動作原理がおわかりいただけたと思います。では本題の結論から、ネット上で、トモセラピーだけが優れたシステムのように紹介されている件ですが、その内容を確認してみたところわかったのは
トモセラピーの記事で比較していたのは、旧世代のIMRTでした。高精度の位置決めを行い、他の臓器への悪影響を減らすのはIGRT(画像誘導放射線治療)の特徴であり、現在主要な医療機関の外照射治療であれば普通に画像誘導下でIMRTを行っています。トモセラピーもIMRTの一種であり、トモセラピーという特定のシステムにこだわる理由はあまりないということ。

※ 詳しくは以下を御覧ください。投稿された方が参照したいくつかの記事の内容を確認しました。

参照記事1:ウィキペディア トモセラピー

wikipedia トモセラピー
従来の放射線治療では患者の皮膚表面に記したマーキングを頼りに照射を行なっていたため、各回の治療毎に照射される部位の誤差が大きかったが、トモセラピーではCT(Computed Tomograpy)撮影を各回の治療前に行なって照射位置を修正して、高い精度で放射線治療を行なうため、放射線による正常組織の障害を低減することが期待される。

 
マーキングを頼りに照射していたのは、画像誘導機能を持たない1、2世代前の古いシステムです。「wikipedia トモセラピー」の履歴を調べてみると、2013年7月23日にはすでにこの記述がありました。当時は古いシステムも稼働していたのかもしれませんが、約5年経った今でも古い記述がそのまま残っているため、現実とのズレが生じています。
→ 履歴: wikipedia トモセラピー 2013年7月23日 (火)

患者の皮膚表面に記したマーキング

実は、現在でも放射線治療では、固定具と体の位置関係の再現性を確保するため、腰の両側などにマジックで目印をつけ、照射時の位置合わせに使います。しかしこれだけでは不十分で、腰骨を一定の位置に合わせた場合でも、体の中心部にある前立腺は、直腸や膀胱などの日々の動きによって位置や形が変化しますから、照射直前に放射線治療システムに内蔵されたレントゲンやCTによって位置を確認し照射位置の補正を行います。これがIGRTと呼ばれる画像誘導放射線治療で、トモセラピーだけでなく、最近のIMRTでは普通に行われているはずです。

参照記事2:がんサポート:強度変調放射線治療の専用機

がんサポート:検査と照射を同一機械で行いピンポイント治療を実現させた「トモセラピー」
「たとえば、7方向から放射線のビームを照射する場合、CTの画像から線量を計算して照射計画をたてるのですが、実際には『計画どおりがんに照射されるだろう』という前提で行っているだけなのです」と浜さんは指摘する。皮膚に照射位置をマークしても、体内の臓器は毎回1.5~3センチぐらい位置がずれる。
体内の臓器やがんの位置が正確に把握できなければ、せっかくの照射計画も絵に描いた餅。不要な部位にも放射線があたる可能性は否めなかったのである。
→ がんサポート:強度変調放射線治療の専用機

 
この場合の、”実際には『計画どおりがんに照射されるだろう』という前提で行っているだけ”というのも、画像誘導の機能を備えていない1、2世代前の放射線治療システムのことを言っています。

皮膚に照射位置をマークしても、体内の臓器は毎回1.5~3センチぐらい位置がずれる。

さらに、ここでは「1.5~3センチぐらい位置がずれる」と言っていますが、前立腺がクルミ程の大きさだというのに、1.5~3センチもズレたら一体何に照射しているのかわからなくなりますから、必要とされる照射範囲よりも、一回り大きい照射を計画し、常に前立腺が照射野からハズレないようにするわけです。(当時でも、同じ治療室内にCTを設置して精度の向上させる対策をされていた医療機関もあると聞く)、このため周辺の臓器にも必要のない照射が行われることになり、放射線障害が起きます。

現在主要な医療機関の外照射治療では、皮膚のマーキングでは「毎回1.5~3センチぐらい位置がずれる」という問題に対して、照射直前にシステムに内蔵されたレントゲン(あるいはCT)などにより前立腺の位置を撮影し、体の位置を寝台ごと移動して照射位置を補正する、というのが当然のように行われているはずです。これにより位置のズレは数ミリ以内になるはずです。この点はトモセラピーでもIMRTでも同じです。

ページ内からこの記事が書かれた日付を探すと、江戸川病院放射線科部長(2011年4月)となっています。江戸川病院は早くからトモセラピーを実施していたことで有名な病院です。2011年では、画像誘導放射線治療(IGRT)下のIMRTが、いまほど一般的でなかったと思われますから、しかたのない記述かもしれませんが、ややミスリードを誘う記事であるかもしません。

参照記事3:姫路医療センター トモセラピー

国立病院機構姫路医療センター  平成29年4月以降の記事
放射線治療装置とCTが一体になっており、治療の度にCTでがんの位置確認、数mmの位置補正を実施できるため照射部位にずれが少なく、正確にがんへ照射することができます。
→ 姫路医療センター トモセラピー

 
これは、その通りです。放射線治療装置と同じ部屋内にCTを設置して画像誘導を行う医療機関もありますが、放射線治療装置に内蔵されているコーンビームCTで撮影するシステムのほうが一般的です。治療は、通常週末を除き週5回行われますが「治療の度に」とは毎日の治療の直前にという意味でしょう。ただしこの記事の内容は、トモセラピーに対してだけ言っているのではなく、通常のIMRTシステムでも同様です。

IMRTで画像誘導(IG)はいつから実施されたか?

調べてみると、例えばNovalis Txを例にしますと、2008年4月の記事にNovalis Txが紹介されていましたから、少なくとも江戸川病院の記事が書かれた2011年にはすでに稼働していたと思われます。しかし、あまり一般化していなかったのかもしれません。以下の記事を参照してください。

Novalis Tx  2008年4月の記事
■治療精度の向上
従来のX線画像と赤外線による患者位置決め装置「ExacTrac X-Ray」に加え,CT画像撮像装置「On-Board
Imager」を搭載したNovalis Txは,病変部を3D画像として取り込むことで,画像誘導による精確な位置決めを行う。
→ Novalis Tx  2008年4月

 
IMRT 前立腺癌の治療の説明ビデオ
Varian Truebeam IGRT

Saint Joseph Mercy Health System 2012/06/04 に公開
Varian TruebeamによるIGRT :放射線治療装置に内蔵されているコーンビームCT(緑のビーム)で撮影し、照射計画との誤差を寝台を移動して調整後、赤のビームで放射線治療

TruebeamによるIGRTのイメージビデオは通常のIMRTではなく、VMATによる回転照射です。VMATはIMRTよりも短時間で照射が完了するためより高精度の照射が可能となっています。次のelekta versa hdによるアニメーションもVMAT。IMRTからVMATへというのが治療システムの進化です。

elekta versa hd animation

Francisco Herrera 2014/09/01 に公開
Elektaのシステムによる放射線治療 VMAT

記事がいつ書かれた、比較対象は妥当なのか?

これらからわかるのは、トモセラピーに比較しているのは、1、2世代前の古いシステムであるということ、これらの記事は古い記事ではあるものの、その時点では高精度なIMRTも運用を始めていたはずです、それには触れず、トモセラピー以外はすべて精度の低いシステムであるかのような説明はやや不適切だと思われます。自分の病院に導入されたシステムがいかに優れたものであるかを示すために書かれた紹介ページということもある、としてご覧になったほうが良いよいと思います。

現在、主要な医療機関では、トモセラピー以外にも、画像誘導(IG)を使ったIMRTシステム、さらにはその進化型であるVMATが普通に使われているはずです。もし、前立腺癌の初回治療に画像誘導を使わない医療機関があったとすれば、治療に対する本気度が足りない病院です。
参照:→ 多根総合病院 放射線治療装置について

毎日の照射前に、画像誘導で位置合わせをしてから照射する、これはトモセラピーでも通常のIMRTでも同じです。CTは複数にスライスした画像の合成によって全体の画像を得ますが、トモセラピーもCTと同様に独特のコリメータによって整形された長い矩形のビームの照射を回転にとともに変化させ、その総和が前立腺全体への照射となるため、照射が高精度でないと成立しない技術です。これに対しIMRTは、多数の方向から、マルチリーフコリメータによって前立腺の形状に合わせた照射を行い、それをを合成したものが全体の照射となります、これも高い精度が必要とされます。
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、前立腺を帯状にスライスした形状の照射を回転しながら行うのがトモセラピー、前立腺の形状に合わせた照射を複数の方向から行うのがIMRT。照射方法に違いがありますが、どちらもIMRTです。

精度が同程度なら外照射の治療の効果は総照射線量で決まる

精度が同程度の外照射システムであれば、治療の効果は総照射線量によって決まるはずです(1回あたりの照射線量が同じと仮定した場合)
副作用は、高精度のシステムを使って、ぎりぎりまで照射野を絞れば、少なくなりますが、病期によって被膜外浸潤にも対応しようとすれば、照射野を広めに取る必要があり、副作用は大きくなります。よって、システムの違いより照射計画の違いのほうが副作用に影響すると思われます。

私が外照射治療を検討したとき、トモセラピーも検討しましたが、結局トモセラピーにこだわることなく通常の外照射システムで治療(実際には小線源併用)を受けました。

インターネットの情報でどれが正しい情報なのかを見分けるのは難しい。書かれた時から、時間が経過すると、現状とずれてしまうこともあるのはしかたのないことですが、多くの情報の中から、確度の高いものを探すには専門的知識が必要なのかもしれない。しかし癌と告知された時、そのような知識を持っているはずがないので、多くの記事を読みその中から妥当と思える情報を探すのは容易ではないが、自分で探し考えることで前立腺癌への理解が深まり、どのような治療をすべきか自ずと決まるかもしれません。

ichi

トリモダリティ│滋賀医大 大阪 林

前立腺がん治療を経験された方の体験談 大阪、林 さん

がんが見つかったきっかけは?、また、どんな治療を勧められましたか?

 父親が前立腺がんで亡くなったのをきっかけに、できるだけPSA検査を受けるようにしていましたが、5年ほど前からPSAの上昇が見られるようになりました。

 大阪市内の総合病院で精密検査を受けた結果、前立腺がんが見つかり、摘出手術と放射線外照射治療についての説明を受けました。
 私自身は、最初は摘出手術するつもりでしたが、インターネットや本を見て、完治させるためにはトリモダリティ以外に治療方法はない、と気づき、担当医に「小線源治療を受けたい」と言ったところ、「うちは小線源治療はしていませんが、ご希望の病院があれば紹介状を書きますよ。」と優しい言葉をかけていただき、途中、遠回りもしましたが、最終的には滋賀医科大学の岡本先生にたどり着くことができました。

 PSA: 35
 グリソンスコア:9
 陽性率: 14%(生検14本中陽性2本)
 T分類: T2a
 診断時年齢: 63歳
 治療年月: 2017年8月
 触 診: 異常はありましたか?
     触診で異常はありませんでした。
      

あなたは、どの治療を選びましたか?

 会社の健康診断では、長い間、PSAは低い値でしたが、57歳の時、「PSA3.9」となりました。しかし、健康診断結果には「(基準以下)異常なし」と書いてありました。
健康診断の問診医に「基準より0.1低いだけなのですが、これって本当に大丈夫なのでしょうか」と聞いたところ、「前立腺炎でもPSAは高くなるので、PSAが高いからと言ってがんとは限りません。いずれにしても、前立腺がんは進行が遅いがんなので心配は要りませんが、検査だけは定期的に受け続けてください。」ということでした
 別の機会を捉えて他の医師にも聞きましたが、大体同様のことを言っておられ、PSAもその後、一時的に下がった時もあって、「多分、前立腺炎なのだ」と勝手に思い込み、すっかり油断してしまいました。

 結局、精密検査を受けたのは4年後の61歳になってからで、せっかく早期発見したのに、PSAはすでに12まで上昇していました。
 精密検査を受けた大阪市内のT総合病院のH医師は、最初から前立腺がんの可能性を疑っておられ、最初の生検でがんは見つかりませんでしたが、翌年、「また生検をやりましょう」、と言われました。(多分、その時、私は露骨にいやそうな顔をしていたと思います。)
しかし、次の生検でがんが発見され、H医師から「次回の診察までに、治療方法を選択してください」と言われました。
 私の場合、限局がんという診断でしたので、摘出手術してしまえば後腐れがないはず、と思っていましたが、インターネットや本でいろいろ調べて見ると、高リスクの場合、摘出手術を受けた患者の約半数が再発しているというデータが書かれており、愕然としました。

 何か良い方法はないか、

いろいろ調べた結果、トリモダリティが一番良いということがわかり、翌週、「小線源治療を受けたい」と言ったところ、H医師は「いろいろと調べられ、希望の病院があるのですね。うちは小線源はしていないが、ご希望の病院に紹介状を書きますよ。」と優しい言葉をかけていただきました。初期から前立腺がんを疑い、生検の本数を通常より増やして見つけていただいたり、患者が言いだしにくいことを察知して紹介状の話を切り出してくれたり、今でもH医師には感謝しています。

 ただ、その時失敗したのですが、治療方法の選択も重要だが医師の選択が重要なのだ、ということがこの時点ではわかっていなかったため、トリモダリティの治療実績をホームページに公開してアピールしている病院の中で、通院しやすいところ、という基準で考え、近くのH医科大学病院への紹介状を書いてもらいました。
 ところが、H医科大学病院へ行きトリモダリティを希望すると、「あなたの場合は摘出手術が一番適しています」、と言われ、来るところを間違えたとすぐに気づきました。
「トリモダリティ以外は考えていないので、滋賀医科大学病院への紹介状を書いていただけないでしょうか」、と言い、結局、遠回りして滋賀医科大学へとたどり着きました。

 ただ、この時、思ったのですが、H医科大学病院の公開情報では、完治率は公開していないものの、トリモダリティも放射線外照射治療も多くの実績があるようでした。それなのに担当医が摘出手術にこだわったことにひっかかりを感じ、理由はいろいろあるにしても、当たった医師により自分の得意な治療方法を勧めるのだろう、とその時、思いました。ということは、滋賀医科大学へ行っても、最初に当たる医師によっては手術を勧められるかもしれない。おそらくいったん滋賀医科大学で別の医師に診てもらうと、途中から岡本先生に回してもらうことは難しいかもしれない。その時はせっかく岡本先生がおられるのに、また他の病院を探さなくてはならないかもしれない。いつまでもそんなことはしておられない、と思い、H医科大学には「紹介状は泌尿器科ではなく、前立腺癌密封小線源外来の岡本医師宛にしてください」と頼み込みました。

 そして、やっと岡本先生のところにたどり着いたのは、2016年の9月、PSAはすでに35まで上がっており、グリソンスコア9という状況でしたが、最初の診察を受けたその日のうちにホルモン治療を始めていただきました。
岡本先生のお話では、「PSAの上昇速度が早いこと、グリソンスコアも高いことから、摘出手術では間違いなく再発するケースです」とのことでした。

 現在の心境としては、

「前立腺がんは進行が遅いがんなので、あわてなくても大丈夫」と言われた言葉を真に受けて、のんびりしていた自分が悔やまれます。人によって違うんですね。
滑り込みセーフだったのか、あるいはもうアウトなのか。
 完治を目指して、一番確実な治療方法と医師を自分で探し、選択しました。これでだめならそれは運命、でも岡本先生の治療なら絶対大丈夫、再発はしないはず、と現在、思っています。

治療後の経過、感想など自由にお書きください

差し支えなければ、男性機能はどうなりましたか?、教えてください。

 男性機能については、ホルモン療法の時は、射精はできないが勃起機能の方は大丈夫な状態というのは確認できましたが、小線源治療・放射線外照射後は、とてもそのような気分にはなれず、まだ試したことがありません。

 副作用については、

ホルモン療法ではほとんど副作用がなく、小線源治療では尿の出方がかなり悪くなったものの、特に気になるほどではなかったのですが、放射線外照射後は副作用に苦しんでいます。
とにかく尿も便も残留感がひどく、何度でも行きたくなる。おまけに生まれて初めて痔になり、何度もトイレに行くたびに痛さで体力を消耗していきます。現在、サラリーマンで仕事をしていますが、幸い職場の近くにトイレがあるものの、切迫便に追い立てられてトイレに入ったら、先客で個室がすでにふさがっていた時は、思わず絶望の声を上げそうになります。
 紙オムツをはいているので、どうしようもない時は仕方がないのでそのまま漏らします。個室が空いたら、お尻を拭いて、紙オムツを履き替えます。最近の紙オムツはよくできているので臭いはほとんどわかりませんが、漏らしてしまうと部屋に戻ってイスに座ることができないので、別のトイレを見に行くか、トイレ付近で休憩しているふりをしています。
 最後はながながと汚い話で終わり、すみません。現在、私にとって一番切実な問題です。


大阪、林

インタビューへの回答 ありがとうございます
林さんから
「自分が治療を受けた時、初めての体験で何をされるのかもわからない一寸先は闇の中で、じぇんじぇんがんの体験記を見ておぼろげながら、ああ、この先はこんなことが待っているのか、ああ、ここさえ乗り切れば何とかなるな、ということがわかり、ずいぶん助けられました」
とお聞きして、嬉しいような、気恥ずかしいような気持ちです。投稿ありがとうございました。
私が、癌だと言われた時、トリモダリティ治療を受けるって、どんななんだろうと思っていましたが、なかなかネットでは患者からの情報が見つかりませんでした。「じぇんじぇんがん」は、そんな方に伝えられればいいなと思ってが書いています。読んでいただきましてありがとう。

前立腺がんセミナー2017大阪、岡本圭生

腺友倶楽部主催の前立腺がんセミナー

患者・家族の集い2017大阪(10月9日)のご案内

腺友倶楽部主催、2017年大阪での前立腺がんセミナーが開かれます、今回の出演は小線源治療の滋賀医大 岡本先生です。

講演1:「ハイリスク前立腺がんと向き合って」
    惠 宏敏 氏  患者( 小線源+外照射+ホルモン療法 )

講演2:「治療法の選択にあたり、知っておきたいこと」
     ~ 再発のない治療を目指して~
    岡本 圭生 氏 滋賀医科大学 前立腺癌小線源治療学講座 特任教授
Q&Aセッション:岡本圭生 / 惠 宏敏 / 武内 務 / 橋本佐与子(司会)

「前立腺がんの治療法は、どれを選んでも効果はほとんど変わらないと説明されることが多いのですが、それは死亡率のこと。非再発率には大きな開きがあるのをご存じでしょうか。・・・という案内で始まるこのセミナー。今回出演される、岡本先生は、実は私の治療をしていただいた先生で、この「じじ..じぇんじぇんがん」でもその経緯を書いています。今回の公演では小線源治療の最前線の話が聞けるはずです。

セミナー:【治療法の選択にあたり、知っておきたいこと】

10月9日、予定通りセミナーが開催され多くの患者さんが訪れました。その時のビデオを紹介します。

~ 再発のない治療を目指して~ 岡本圭生 氏

【Q&Aセッション】

NPO法人腺友倶楽部
「前立腺がんセミナー 患者・家族の集い 2017 大阪」

※ ご注意
これらの動画はNPO法人腺友倶楽部が作成しyoutubeに掲載されたものです。youtubeでは、紹介するページ内で動画を再生することを認めているため、youtubeに移動することなく、このページ内で動画を見ることができます。しかしこの場合でも再生される動画データはyoutubeから転送されており、このサイト内に動画があるわけではありません。(つまり著作権の侵害にはあたりません)

名 称:前立腺がんセミナー 患者・家族の集い2017大阪
日 時:2017年10月9日(月曜・祭日)
    13:20開場  13:40開始
会 場:エル・おおさか(大阪府立労働センター)5階 南ホール
→ エル・おおさか 交通アクセス

参加費:一般 1000円(ただし、腺友倶楽部会員及びその同伴者は3人まで無料)
申 込:直接以下のエントリーフォームから (先着順 200名)
腺友倶楽部 前立腺がんセミナー 患者・家族の集い2017大阪(公式ページ)
もしエントリーフォームでの記入ができないなら、以下のパンフを印刷後に、内容を記入してFAXで申し込むこともできます。パンフレットのダウンロードはこちら
 

Re:スライドには小線源単独では160Gyとある

このページの岡本医師のセミナー動画をご覧になった方から、滋賀医大では小線源単独はBED200Gy以上としているのに、スライドでは160Gyと書かれている。これはなぜですかという質問をいただきました。確認してみると、治療計画の説明の場面でした。


局所再発のない小線源療法を行うためのポイント
小線源単独症例では160Gy、外部照射併用症例では110Gyに相当するDose Cloudで前立腺(ターゲットボリューム)を完全に包み込むようにする(V100をほぼ100%に)

ここでの、160Gy、110Gyに相当するDose Cloudとは処方線量のことです。


中間リスク:基本は小線源単独(高線量、ホルモンなし)
単独:D90=190-200Gy BED>200Gy
高リスク:外部照射併用療法
併用:D90=135-145Gy BED>220Gy

さらに動画が進んで、単独:D90=190、併用:D90=135とありますが、この場合の数値はD90と呼ばれる前立腺体積の90%に照射される最低線量です。


このグラフは各治療におけるBEDの比較です、左から
Cyberknife サイバーナイフ
Implant alone 小線源単独
Implant+ External beam (radiation) 外照射併用小線源
Proton 陽子線治療
IMRT 強度変調放射線治療

放射線療法におけるBEDの比較では、小線源単独のD90=190GyはBED208Gyに相当する、また、外部照射併用小線源はBED220Gyに相当する。そのどちらも、サイバーナイフやIMRTといった外照射の線量を大きく超えているということを示してします。

処方線量、D90、BEDの違い

放射線治療の内容を示す数値として◯◯gyと書かれていても、それが何を表すのか、わかりにくいことが多い。治療計画では 処方線量が使われ、治療の説明や治療後の線量の確認ではD90の値が重要になる、そして放射線治療の効果を他の治療法と比較する時にはBEDが使われます。

処方線量 前立腺全体に最低でも照射されるべき線量
小線源単独療法:160Gy
外部照射併用療法:110Gy (+外照射45Gy)

V100(%) 処方線量100%で囲まれた体積が前立腺全体に占める割合

D90(Gy) 前立腺体積の90%に照射される最低線量
V100=100%近くになれば、およそD90は以下の値になる
小線源単独療法:190Gy
外部照射併用療法:135Gy

BED(生物学的実効線量)
小線源単独:I-125でのD90=190Gy は BED=208Gyに相当する。
外照射併用:I-125でのD90=135Gy + 外照射45gyは BED=220Gyに相当する。

低リスク、中間リスクであればBED>200Gy
高リスクであればBED>220Gyが達成できればほぼ局所コントロールは100%になると考えられる。

参照:医療関係者専用情報|小線源療法のパラメーターとポイント

このセミナーのビデオはおそらく医師向けとそう変わらない内容のものだと思いますので、ある程度放射線治療のことを知っていないと、ほとんど理解できないかもしれませんが、局所再発のない前立腺癌治療には非常に高い線量を投与できる小線源療法が必要であるということの説明です。