小線源手術 -サティの音が流れる中で-

入院2日目:手術

前立腺癌 密封小線源治療

プレプランで入ったことのある治療室。手術に先立って先生の手で麻酔が行われます。麻酔は脊椎に注射をするサドルブロックと呼ばれるものです。10数分後に麻酔が効き始めると、寝台に仰向けに寝かされ両足を広げ固定されました、ちょうど足を軽く開いて椅子に座ったような体勢のまま寝かされているという格好です。

いつの間にか尿道カテーテルが挿入されたようです。そこまではわかったのですが、プレプランの時(※2)とは違い麻酔が効いているので全くわかりません。麻酔というのは凄いもので足が曲がっているのか伸ばしているのかさえわからないのです。しかしその効果は腰から下だけのため、手は動くし意識も普通にあります。

akane
写真を掲載したいところなのだが、いくら私でも手術室にカメラは持っていかなかったので貼る写真がない。そこで写真はいかがだろう。これが何かと言えばアカネ科の植物アカネの種子、つまりシード。この体験記には何枚かの植物の写真を使っていますが、そのいくつかがシードつながり、つまり種子の写真です、お気づきでしたか?

シード線源は音に乗せて

そして手術開始。手術は静かなクラシック音楽とともに始まりました。プレプランの時はビバルディーの四季、今回の小線源手術の時はエリック・サティ 「ジムノペディ 第1番」からでした。

この手術で埋め込まれるシードからの見えない力でがんを抑え込むわけですから、ある意味神秘的な感じさえします。音楽は五線譜に美しく散らばった音の粒で心を癒し、小線源は生体にバランスよく散りばめられたシードで体を癒すわけです・・。

シード線源は辺縁に配置される

この写真は手術後に体の正面から撮った実際のレントゲン画像です。上の少し暗い部分が膀胱、白の小さな線がインプラントされたシードで、私の場合61本ですから比較的少なく、画像でもシードがまばらな感じですね。

私の前立腺にインプラントされたシード

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前立腺自体は写っていませんが、シードによってその形がなんとなくわかるでしょうか。シードは前立腺の辺縁に配置され、中心部の尿道付近には配置されません。しかし写真では中央にも留置されているように見えます。これはレントゲンによる透視画像であるためで、実際には手前か奥に留置されたシードが写っているためと思われます。

患者の私から見えるのは天井と手術の経過を写しているらしいモニタに超音波画像のようなものくらいですが、目の悪い私にはよく見えませんでした。術中は子供みたいに看護師さんに手を握っていただいて安心して仰向けに寝ているだけ。何を考えるでもなくじっと待つだけですが、そんな時間を静かな音楽を聴きながら過ごせたのは手術を受ける私にとっても非常に心地よいものでした。

うとうとしているうちに手術完了

お約束はじっとしていること、
しゃべらないこと、
眠らないこと、

それから大事なことがもう1つ、
麻酔薬の関係で頭を持ち上げてはいけないのだそうです。
麻酔が効いていますから、苦痛もなく眠くなるほどです、うとうとするくらいなら大丈夫。しかし、起きた時体がピクッと動いたりするとまずいので本当に寝てしまってはいけないのだそうです。聞こえるのは静かな音楽と、先生方の声だけです。しばらくすると「・・・もうすぐ終わります」という先生の声で手術が完了しました。

前立腺永久挿入密封小線源療法
手術:小線源挿入手術(外照射及びCAB療法併用)
処方線量:110gy (D90 130gy)
シード線源:61本(そのうち数本のシード線源は精嚢に留置)
麻酔:脊椎麻酔(サドルブロック)
時間:およそ2時間

小線源治療後、個室に戻されました。

じっとしているのが辛い、しかも尿がでない・・

麻酔の効果が切れるまで安静!

手術の写真を掲載したかったのですが、さすがにそれは・・ありません。あったとしても、ちょっと掲載がはばかられるような構図に違いないでしょう。部屋に戻されたところで看護師さんに1枚撮っていただきました。

麻酔の効果が切れる夜まで寝たままで安静にしていてくださいという指示があり、腕には点滴、股間には尿道カテーテル、さらにオムツがあてがわれており、トイレにもいけません。ご覧のように、頭をベッドにつけたまま寝ているだけなんですが、これが辛い。しだいに腰も痛くなってきて、手術よりも辛いくらいでした。

それから・・おしっこが溜まっている感覚があるのに、出たという感覚がない。看護師さんに相談しても、そう感じる方もいるとのこと。尿道カテーテルは初めてだったのでこんなにも出にくいものなんだろうと思い、良く眠れないまま朝までずっと尿意を我慢していました。

入院3日目

手術翌日 CT検査

ところが、翌朝カテーテルからのチューブが曲がっていたことがわかり、直してもらったら一気に尿が出て楽になりました。それからは尿が溜まる感覚もなくとても楽でした。頭を動かせないので自分ではチューブの異常がわからなかったのですが、担当看護師にもっと強く症状を訴えるべきでした。

翌日はベッドから起き上がって立つことができ、やっと体が楽になりました。でもカテーテルはご覧の通りまだつけたままです。オムツもつけたままですが前日の食事が軽かったた手術後の便意もまだありません。午後、線源の配置を確認するためのCT撮影がありました。

小線源の照射線量130Gy(D90)

これは後日放射線担当医に見せてもらった画像です、この画像はCT画像に線量が描画されたものでで、尿道に差し込まれたカテーテルが濃いグレーで写っています。尿道への線量は抑えなければなりませんが、前立腺(赤の線)を包むように描画されている高い線量を示す黄色の線(160gy)がうまく尿道を避けているのがわかります。わかりにくいのですが実際には緑の腺の外であり130Gy以下になっています。

トリモダリティの場合は 小線源は130gy(D90)程度ですが、小線源単独治療の場合は190gy(D90)以上という非常に高い線量です。この高い線量を与えられるからこそ滋賀医大では中間リスク、あるいは高リスクであっても小線源単独治療が可能となっています。

小線源手術自体の負担ということで言えば、生検のそれと大きくは違わないという印象でした。もっとも内部から一定期間放射線が照射されますから体の負担が少ないわけではありませんが。

というわけで手術完了


※2 プレプラン
プレプランでは、シードの本数を決めるためと、実際に線源が挿入できるかどうかを確かめるため、手術と同じ体勢で、尿道カテーテル、経直腸プローブが挿入されましたが麻酔は使われないため何をしているのか、おおそわかります。

術後に、なぜ音楽を流すのかお聞きしたところ、
患者の安らぎだけでなく先生が精神を集中させて臨むためにも良いとのことでした。そういえば先に挙げたドビュッシーも術中に聞こえたと記憶しています。
→ Erik Satie: Gymnopedie 1,2,3 Gnossienne 1,2,3,4
→ アラベスク第1番 ドビュッシー
以前は小線源手術の際に時アヴェ・マリアを使っていたそうです。ん~ん、これもいい。もう一度手術を受けるならバッハ「G線上のアリア」にしよう・・・って、それはないですね。 聞くところによるとこの病院では、手術中に音楽を流すのが普通らしく、なんとリクエストも可能だとのこと。
→ Schubert – Ave Maria

トリモダリティ体験記

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