治療後、男性機能はどうなるのか?

失うのは男性機能か、それとも命? の続きです

手術を受けたら・・男なら誰でも気になる

手術では前立腺と精嚢を摘出する、
  男性機能はどうなるのか?

私の場合「男性機能は残せません」という話で終わりでしたが、ネットで探しても詳しい説明はあまりありません。「そういうことは表に出さない」という日本人気質のせいかもしれませんが、大切なことだと思います。私の知っていることを、ここにまとめて紹介します、関心のない方はこのページを読み飛ばしてください。

■ 勃起神経の温存は可能か?

勃起神経は前立腺表面を包むように左右に存在します。勃起神経を温存する手術では、この神経束をできるだけ残しながら前立腺を摘出します。最近のカメラを使った拡大視を使い熟練した医師が行えば、神経温存がうまくいく可能性も高いと思われます。
しかしながら、微小な皮膜外浸潤は画像診断ではわからないこと。前立腺がんは多発性とされていることから、特に高リスク患者では、腫瘍が片方に限局していると診断されていたとしても、別の小さな腫瘍が隠れていないとも限りません。勃起神経温存の適用は再発リスクを少し増やすことに繋がるかもしれない、という怖さがあります。
しかし、勃起神経を温存せずに摘出手術を受ければ再発しない、というトレードオフの関係にあるわけではないので、一番頭を悩ませる問題かもしれません。

※ 勃起神経を温存するとは
Google画像検索:勃起神経の温存

■ タマタマも摘出するのか?

実は前立腺癌治療を調べ始めたとき、手術では”前立腺とその隣にある精嚢を摘出する”と知って、それでは精嚢にパイプでつながっているタマタマ(陰嚢の睾丸)も無事では済まされないだろうと思いました。また、生検で入院した時、転移のある前立腺癌のお爺さんから、タマを取ったという話を聞きましたから、なおさらです。
それは男として困る、見栄えだって悪いではないかと思ったのですが、幸いにも勘違いでした。転移のある前立腺癌がん患者の場合、薬による内分泌治療の代替としてそういう治療も選択できるというだけで、あまり行われません。また、根治治療では睾丸の摘出は絶対しません。
 
全摘手術は前立腺と精嚢を摘出し、陰茎からの尿道と膀胱を直接吻合する手術です。精巣(タマタマ)から前立腺への輸精管は結紮されてしまいますが精巣自体はそのままです。尚、精嚢と陰嚢を混同される方もいらっしゃるかもしれませんが、精嚢は陰嚢とは違い体の外からは見えない別の器官です。

詳しくは Google画像検索:前立腺と精嚢 精巣をご覧ください。

■ 射精機能は失われるが・・

全摘手術を受けた場合でも、精巣(睾丸)はそのままであるため『なんとなく射精はできそうな気がする』と思われるかもしれません。しかし手術療法での摘出後は、膀胱と尿道は直結されています。さらに精巣からの輸精管も結紮され精子の行き場もありません。よって、射精はまったくできなくなります。
意外なことに・・射精で放出される成分のうちのほとんどが「前立腺と精嚢」で作られており、精巣(睾丸)で作られる精子はそのうちの僅かな量だそうです。精液成分の約3割は前立腺で作られる前立腺液、精嚢ではその2倍の量が精嚢液として蓄えられ、それらが混合されたものが精液となり射出されるというしくみです。手術ではこの前立腺と精嚢を摘出してしまうわけですから、精液は全く出なくなるというわけです。

■ 射精できるかどうかと、勃起できるかは別のこと

では、男性機能を残すというのは、どういうことなのか・・
勃起神経が温存され勃起能が回復した場合は、刺激により射精感は得られると言う。手術により「射精はまったくできない」のだから、それはおかしいと思われるかもしれないが、「精液は出ないがその感覚はある」というバーチャルなものです。不思議なことですが射精感は脳が作り出しているということなのかもしれません。
術後早い段階からリハビリを行うことで勃起能の回復の可能性が高くなるという報告もあります、経験者の話では、担当医から術後早い時期にシアリスを処方(ED治療薬として使われるのだが、保健適用にはならないので高価)されリハビリを薦められたとのこと。この結果、最初はうまくいかなかった(射精感までたどりつけない)が、やがてその感覚は以前のものに近くなった」とのことです。
一方、神経を温存する手術を受けた場合でも、確実性はなく勃起能が回復しないこともあると聞きます。その場合は無反応、まるで「自分のものとは思えない」というとても悔やまれる状況なのだそうです。

■ それでも男性ホルモンは問題なく放出される

前立腺と一緒に精嚢を摘出するわけですから、それにつながっている精巣からのパイプもカットされてしまうわけです。そこで疑問に思うのは、精巣で作られた「精子はどうなるのか」ということです。・・精子はどうなるのかはわかりませんが、避妊のためのパイプカット(精管結紮手術)が成立しているくらいだから問題はないはずです。
もう1つ、精巣で作られる「男性ホルモンはどうなるのか」ということです。男性ホルモンについては、もともと精巣から血液中に直接放出されているものなので影響はないそうです。この男性ホルモンは筋肉や骨の維持にも関わる重要なものです、性的欲求にも強く関係します。

■ 脳も男性ホルモンの影響下にある

私が問題を感じるのは、手術において勃起神経を切除した場合や、神経を温存したが勃起能が失われてしまった場合でも、それに関係なく「性的欲求はちゃんと残る」はずですから、男として精神的に辛いのではないかということです。ガンだから仕方ないと神経切除に納得できるのかどうか、復活できないだけに判断は慎重にすべきです。
特に手術日程の関係で、やむおえず短期的にホルモン療法を行っている方の場合は、その判断をすべきではありません。ホルモン療法中は脳に男性ホルモンの影響がなくなるので、性的なことに関心などはなく「神経温存なんてどうでも良い」と思えてしまうからです。ホルモン療法が終わって男に戻ってから「しまった」では遅いのです。手術での神経温存が無理と言われたなら、治療法自体を考え直すということもできるのですから。

性機能障害とリハビリテーション

性機能障害とは、性欲、勃起、性交、極致感のいずれかひとつ以上欠けるか、もしくは不十分なものといわれています。その中でも直腸がんや泌尿器科系がん(腎臓、膀胱、前立腺、精巣)の手術後におこりやすい障害には、男性の勃起障害、射精障害、性欲減退などがあります。
→archive:性機能障害とリハビリテーション|国立がん研究センターがん対策情報センター

手術と性機能障害│ディペックス・ジャパン

 術後の性機能障害について医師から説明を受けたが、がんを取り去ることを最優先したいと思った
 手術を受けた人から、手術をやり直したことや、勃起能力を失ってしまって「面白くない」という話を聞き、手術は選ばなかった
→手術と性機能障害│ディペックス・ジャパン


 
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医師の話は続く

トリモダリティ体験記

どの治療法を選択するか
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