決断:どうしたら完治できるのか

BED220Gyの照射で局所制御は可能

局所制御 とは?
「局所」とは、耳慣れない言葉ですが、この場合は前立腺のことです。その制御が可能、つまり「癌を消滅させられる」ということ、それには「BED220Gy」の照射が必要だという意味です。
 
放射線治療の効果は(照射期間、総線量、1回線量、分割回数)によって決定されますが、そのままでは方法の異なる放射線治療と効果の比較はできません。そこで・・
 
BED (Biologically Effective Dose)
培養癌細胞への放射線照射後の影響を測定した結果をもとに得られた数式から、分割照射による生物効果を表す指標として、 BEDが提案されています。放射線治療をBEDに換算することで、放射線治療どうしの治療効果を比較することが可能です。
参照:放射線治療の線量効果関係

先の報告書では、米国Mount Sinai大学の医師Dr. Stoneは、数多くの経験からハイリスク症例に対してはトリモダリティ、つまり小線源と外照射の併用による高いBEDの放射線照射が最も治療効果が高いとしている。その高いBEDの照射が日本のどの病院で行われているかが問題だった。

医師Dr. Stoneによれば

高リスクに対して必要なのは高いBEDを照射すること
BED220Gy以上を照射すれば局所制御は可能である

小線源療法に外照射療法と9ヶ月のホルモン療法を併用することで局所制御率は98%となり、高リスクの前立腺癌にはこれがベストな治療法と考えられます。高いBEDが照射されるためには小線源療法は必要であり、また高いBEDを照射してもその安全性は増悪しません。
この報告書では、PSA再発を予測する重要な因子は PSA値、グリソンスコア、そしてBED であるが、転移を予測する、あるいは5年全生存率を予測する重要な因子は、外照射とBEDであり、グリソンスコアとPSAは因子ではなかった。としている。
引用:ハイリスク症例に対する密封小線源療法の可能性|日本メジフィジックス株式会社(但しリンク切れしているため、主要部分の記述を転載)

癌を消滅させられる

このことから、グリソンスコア8以上、あるいはPSA20以上などの「高リスク要因」に対しては、BEDを高くした放射線治療が有効であり、BED220Gyを照射すれば局所制御は可能であるとしている。(局所制御は可能とは、転移も起きないし再発もない、つまり癌を消滅させられるということ)

日本で行われている小線源治療のBED

米国Mount Sinai大学の医師Dr. Stoneが行っているような、高いBEDを照射する治療が、日本のどの病院で受けられるのか、調べてみてもほとんど情報はありませんでした。(どこに書いてあるか調べきれなかったということもあるが・・)
日本で行われている小線源治療のBEDは、およそ次の通りのようでした。この論文通りに130Gyの小線源と45Gy外照射を併用しBED220Gyを実現している医療機関の1つが滋賀医大ですが、BED220Gyの治療を実施しているのは一部の医療機関だけのようで、外照射併用小線源でもBED200Gy、また小線源単独治療ではBED169Gyが一般的かもしれません。

BED(Biologically Effective Dose)
BED220Gy: 小線源130Gy(D90)のヨウ素125、
           外照射45Gy併用(滋賀医大ほか)

BED208Gy: 小線源単独治療(滋賀医大)、195Gy(D90)のヨウ素125
BED200Gy: 小線源100Gy(D90)のヨウ素125、外照射45Gyの併用
BED169Gy: 小線源単独(多くの病院)、160Gy(D90)のヨウ素125
BED156Gy: 外照射単独(標準的な放射線照射治療) IMRT 78Gy、2Gy✕39回

※(D90) D90としていますが、これは前立腺の体積の90%に照射される放射線量を示しています、処方線量とは別のものです。

この報告書では、BED220Gyを得るには、小線源と外照射の併用が必要であり、短期のホルモン療法を併用すればさらに効果が高まる。としている、外照射単独治療でそれに近いBEDを得ようとすると、BED200Gyであっても、線量は100gy(2gyを50回として)が必要となり、けっして現実に実施できるものではない。
これらのことから、高リスクの前立腺癌に対しては小線源と外照射の併用でBED220Gyを照射すること、もしくはホルモン療法を併用したトリモダリティが非常に有効であるとわかる。

『小線源と外照射の併用でBED220Gyを照射』。
探していたのはまさに、これだ。この治療法に賭けようと思いました。


トリモダリティ

小線源治療を、おもに高リスク以上の前立腺がんに適用するために考案された治療法です。トリモダリティという言葉が前立腺がん治療において使われる場合、単に、小線源療法(ブラキセラピー)+放射線外照射+内分泌薬の3つを併用した治療という意味ではない。外照射や従来の小線源単独では得られない「超高線量照射をするための治療法」という意味合いが強く、外部照射(IMRT)や手術療法に比べて「非再発率や局所コントロール」という点で非常に優れているとされている。
トリモダリティは、まず内分泌治療から開始され、その後数ヵ月後に小線源治療、さらにそれから6週間程度の間をあけて放射線外照射が行われます。内分泌薬の使用は、放射線治療の効果を高めるためのものですが、照射後も6ヶ月ほど続くため、体への負担は少なくありません。
 
トリモダリティにおける内分泌薬の使用期間は、3ヶ月、9ヶ月という短期の医療機関から、2年、あるいはそれ以上の長期使用をする医療機関までさまざまです。得に長期使用は体に重い負担を強いることになります。

小線源単独療法(滋賀医大)

多くの病院では、小線源単独は「低リスク症例を対象として治療が行われています。これは小線源による照射線量では、中間リスク以上に対して線量不足が懸念されていたためです。
滋賀医大ではトリモダリティの経験、実績をもとに、より体への負担を軽減できる小線源単独療法においても、非常に高い線量を投与する手法を確立することで、従来は適用できないとされた、中間リスクや高リスクの一部にまで、小線源単独療法の適用を拡大しています。この治療法はトリモダリティのBED220Gyの処方よりも技術的には難しいものですが、単独で高リスクにも対応できる高線量が投与できるのは、体への負担を考えると大きなメリットがあります。無論、従来の「小線源単独療法」とは全く別のものです。また、現在低リスクには原則アクティブサーベイランスが適用され、小線源治療は行われていません。
→前立腺癌小線源療法の特徴について – 滋賀医大 前立腺癌小線源治療学講座

小線源治療(NCCNガイドライン)

小線源治療は、中間リスク以上であっても医療機関によっては高線量インプラントによる単独、あるいは外照射の併用により根治が目指せるとされています。NCCNガイドラインによれば、”最新の密封小線源治療は高リスクの限局性および局所進行前立腺癌患者においても一定の役割を果たす可能性がある・・”と書かれており、高リスクへの小線源治療の可能性を認めている。しかし非常に慎重な書き方でもあり、このことからも高リスク前立腺がんの小線源治療では医療機関の選定が非常に重要だと思われます。

密封小線源治療は、初期の研究において高リスク例ではEBRTより有効性が低いことが判明したことから、従来から低リスク症例を対象として用いられてきた。
しかしながら、密封小線源治療の技術的進歩により、最新の密封小線源治療は高リスクの限局性および局所進行前立腺癌患者においても一定の役割を果たす可能性があることを示すエビデンスが増えてきている。
→NCCNガイドライン 日本語版 | 泌尿器がん

小線源治療は、高い線量を癌に照射するが
線源から放出される放射線のエネルギーは非常に低い

シード線源から放出される放射線のエネルギーは非常に低いため、治療に有効な放射線は数mmしか届きません。この性質を利用して前立腺に集中して放射線をあてることができ、前立腺内のがんに対しては高い線量を与えつつ、周りの正常臓器(直腸、膀胱など)の線量は低く抑えることが可能です。高い治療効果と少ない副作用を両立させた治療法として期待されています。
前立腺がんに対する密封小線源療法(シード治療)|慶應義塾大学病院 KOMPAS

LDRとHDR(トリモダリティ)

ここでは小線源療法と書いた場合、線源を永久留置する低線量率小線源治療(LDR)を指していますが、同じく内部照射で放射線源を一時留置する高線量率小線源療法(HDR)もあります。LDRはおもに低リスク~中間リスク、HDRはおもに中間リスク~高リスク患者向けの治療とされますが、HDRは単独ではなく外照射、内分泌を併用した治療法(HDRトリモダリティ)になるのが普通で、高リスク前立腺癌の場合は、LDRでも外照射、内分泌の併用(トリモダリティ治療)になる場合が多いようです。トリモダリティにLDR、HDRのどちらを使うのかは、医療機関ごとの考え方の違いによるもののようで、高リスクに対して従来から行われてきたのはHDRですが、近年注目されてきたのはLDRです。どちらの治療法も高リスクに対して実施しているのは一部の医療機関で、小線源の照射線量、内分泌薬の投薬期間、外照射の時期や照射方法などは、医療機関によって様々です。

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トリモダリティ体験記

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