#10|悪性度とリスク分類 – 前立腺癌

もしテレビドラマなら、困難な治療に対して立ち向かい、一時は危険な状態になるが、医師の力と本人の強い意思によって危機を脱し「完治!!」というストーリーが浮かんでくる。
しかし現実は、医師を信頼し痛みを受け入れ、その医師が全力を尽くしたとしても..「再発」かもしれないのです。忍耐や努力を重ねても結果は別である、そんな理不尽なことが起こり得る..でも、そんな治療なら受けたくない。

TMN病期分類: T2b 腫瘍が左葉の半分を超えて進展
グリソンスコア:8 陽性率32%(5/16)
PSA:   2.97ng/ml

私の場合、PSAは3未満という、患者仲間から笑われてしまうような値ですが、直近のPSADTが10ヶ月にまで短縮しており、PSA値は低くても癌の進行は早いようです。悪性度がグリソンスコア8であるため、リスク分類は”高リスク”とされましたが、”グリソンスコア7”だったら良かったのにと、何度も思いましたね。・・グリソンスコアにおいて、この数字1つの違いは小さくないのです。


これはイガホオズキというナス科の植物で、林縁や木陰などやや暗めのところにあって、10ミリくらいの小さな花が目咲く、そしてイガイガの実をつけます。
私も、少し暗いところのほうが落ち着く、明るいところにいると不安になる。パステルカラーの花よりもアースカラーのほうが好き、にぎやかなところは嫌い、雨は好き、快晴はきらい・・。病んでいる、という言葉があるが、これくらい普通ですよね。

前立腺癌のリスク分類(NCCN)

前立腺癌の性質はひとりひとり違いますが、それを悪性度によって分類しスコア化したものがグリソンスコア。がんの進み具合は、TMN病期分類が一般的です。根治治療が期待できる前立腺がんに対する治療の選択には、それにPSA値を組み合わせたリスク分類が用いられます。

臨床的限局性 PSA監視療法とすべきが最近の傾向

超低リスク ※以下にすべて該当する場合
T1c(触知できず、画像検査でも描画されないが、針生検によって腫瘍が同定)
グリソンスコア≦6
PSA<10ng/mL
前立腺生検の陽性コア数が3未満で、各コアでの癌の占拠率が50%以下
PSA density(前立腺単位容積当たりのPSA値濃度)<0.15ng/mL/g
 
低リスク ※以下にすべて該当する場合
T1~T2a(~腫瘍が片葉の半分以下)
グリソンスコア≦6
PSA<10ng/mL

臨床的限局性 治療が必要

中間リスク ※以下に該当するが、高リスクではない場合
T2b~T2c(腫瘍が片葉の半分を超えて進展~両葉にある) または
グリソンスコア7 または
PSA 10~20ng/mL
 
高リスク ※以下に1つでも該当する場合
T3a(腫瘍が片葉または両葉で被膜外進展)
グリソンスコア 8~9
PSA>20ng/mL

局所進行性 より慎重な治療選択が必要

超高リスク ※以下に1つでも該当する場合
T3b~T4(腫瘍が精嚢に浸潤~腫瘍が隣接構造物に固定、または浸潤)
最も優勢なグリソンパターンが 5 (グリソンスコアが5+4か5+5)
4 つを超える針生検コアでグリソンスコア 8~10

※ 分類は、前立腺がん NCCNガイドライン日本語版 V.2.2014をもとに改変

前立腺癌のTMN病期分類

 T1c 触知できず、画像検査でも描画されないが、針生検によって腫瘍が同定

 T2 - – 腫瘍が前立腺被膜内に限局 – –
T2a 腫瘍が片葉の半分以下
T2b 腫瘍が片葉の半分を超えて進展
T2c 腫瘍が両葉にまたがっている

 T3 - – 腫瘍が前立腺被膜を超えて進展 – –
T3a 腫瘍が片葉または両葉で被膜外進展
T3b 腫瘍が精嚢に浸潤

 T4  腫瘍が隣接構造物(膀胱、挙筋、骨盤壁)の1つ以上に固定、または浸潤

画像検査によるTMN病期分類に確実性はない

「T2cだと思っていたら、被膜外浸潤が疑われT3a」とされてしまい悲しい・・・などという話も聞きますが、TMN病期分類は、そう気にしなくても良いかもしれない、というのは・・
MRI画像検査で癌の分布がはっきりわかる、というわけではない。疑わしいとされても、それが癌かどうかわからないため生検があのです。
造影CTも、リンパ節が膨らんでいる、というのはわかっても確定ではない。
骨シンチも画像診断の1つなのだが、実は異常が指摘されても、あとになって転移ではないと判明することも珍しくないので、診断そのものが誤りである可能性も考えたほうが良い。(リンパ節転移や骨転移は、ホルモン治療によって、その後縮小すれば転移であり、変化がなければ転移ではないとわかる)
 
これとは逆に「T2c」だと安心していたら、術後T3aとかT3bであった、と知らされることもある。それでは困るわけですが、MRI,CT,骨シンチなどの画像検査では、検出に限界があり、確実性はない、ということであり、僅かな被膜外浸潤は検出されない、と考えるべきでしょう。
 
TMN病期分類に確実性はない以上、検査による病期の診断結果よりも、担当医がPSA値の変化や悪性度から総合的に判断し、予想される病期を設定して、それに対する治療をするほうが信頼できると思います。
T3までなら根治が可能です。T4であっても所属リンパ節への少ない転移であれば、治療法によっては根治が目指せます。

 

グリソンスコア

前立腺がんにおいて、病理医が生検プレパラートの癌の組織の形状と浸潤の状況から、その悪性度を1~5の5段階に分けたものをグリソングレードと言い、数字が大きいほど悪性度が高いことを示します。さらに癌組織の最も優勢な部分と次に優勢な部分のグリソングレードを加算したものをグリソン・スコア(Gleason Score)として表します。

例えば最も優勢な部分のグリソングレードが3、次に優勢な部分が4であれば、グリソンスコア(以下GSと略します)は7となり、優勢な部分を先に記述し(3+4=7)となります。逆に優勢な部分のグリソングレードが4であれば(4+3=7)と表されます。 グリソンスコアは2~10まであることになりますが、針生検で見つかる癌のほとんどはグリソングレード3以上であるため、実際にはGS6以上と診断されます。

 グリソンスコア6
 3+3=6
低リスク前立腺癌:最もおとなしい性質の癌で、すぐには治療を必要としない場合もあり、病院によっては無治療、アクティブサーベイランスを勧められることもあります。癌治療学会では、グリソンスコア3+3=6は治療不要であるとし、グリソングレード3の癌を、治療が必要とされるグレード4以上の癌と区別するにはどうすべきか、という方向性で論じられることが多い。

 グリソンスコア7
 3+4=7
中間リスク前立腺癌:グリソンスコア7と診断される患者は多く、GS7の場合はほとんどの治療法が適用できる。進行も比較的穏やかです。
PSAが10や20程度であっても、遠隔転移が起きるという心配は、まず「ない」と考えてよく、急いで治療法を決める必要はない。

 グリソンスコア7
 4+3=7
中間リスク前立腺癌:同じ中間リスクの3+4より4+3のほうが悪性度が高く、治療法においても区別されることがありますが、ほとんどの治療法が適用されるのは同じです。
進行も比較的穏やかと考えて良い、PSAが10や20程度であっても、遠隔転移が起きるという心配は、まず「ない」と考えてよく、急いで治療法を決める必要はない。
グリソンスコア7(4+3)と診断される患者は、かなり多いという印象があります。

 グリソンスコア8
 4+4=8、一部の方は3+5=8
高リスク前立腺癌:グリソンスコア8は悪性度が高いとされ、中間リスクに比べると治療の選択肢は限られます。進行度によっては被膜外浸潤、精嚢への浸潤の可能性も増します。一般に前立腺がんは進行が遅いと言われますが、たぶんそれはGS7迄のこと。GS8以上ではそんなに悠長には構えていられない場合もあるのです。(それでも、少なくとも1、2ヶ月治療を保留した場合でも、何も問題はないというレベル)
グリソンスコア8の悪性度など「そうたいしたことはない」という話をされる医師もいますから、医療機関を選べば、根治性の高い治療も期待できます。

 グリソンスコア9~
 4+5=9、あるいは5+4=9、5+5=10
高リスク、または超高リスク前立腺癌:グリソンスコア8以上は高リスク前立腺癌として一括して扱われることもありますが、グリソンスコア9以上は、より悪性度の高い「グリソングレード5のパターン」が存在するため要注意と考えてください。早く進行することもあると考え、より慎重な治療法の選択が必須です。(それでも1ヶ月がどうの、ということではありません)
進行度にもよりますが、もし5+4や5+5であれば、緊張感のある治療になるかもしれません。現在の仕事に支障が出たとしても治療を最優先にすべきレベルであると考え、転院でもセカンドオピニオンでもフル活用すべきです。

グリソンスコアは見直されることもある

グリソンスコアは絶対と思われているかもしれませんが、そうではありません。
転院した場合などでは、
医療機関ごとに病理医が違いますから、生検プレパラートが再評価されますが、一致率は60%くらいですから結構な確率でその評価が変ります。これはグリソングレードが病理医一人の顕微鏡による観察で決まるというアナログな面があるためで、例えばGS6から7や8へ、逆にGS9から7へなど値が見直されることも珍しいことではありません。身近な方で何人かそのような例がありました。この場合、治療法の選択肢が全く変わってしまいますから、1つの病院で治療法に納得がいかず、他の病院で診察を受けた場合、まったく違う治療法を提案される可能性もあるということになります。
 
時間経過とともに悪性度は変化するかもしれない
例えば1回目の生検後、経過観察を経て2度めの生検を受けた場合では、グリソンスコアが変わることもあります。癌の悪性度が時間経過によって変化しないとした場合でも、組織サンプルを採取という生検の性質上、針を刺した場所によって悪性度がばらつくことも、ありえます。
参照:→改訂された前立腺癌Gleason分類(1) 日本メジフィジックス株式会社

PSA

PSA値は、癌の進行度を示すわけではない

リスク分類は、癌と確定された後の分類です。PSA検査で癌が疑われた時、10ng/mL以下だから低リスクの癌、あるいは20ng/mL以上あるから高悪性度の癌と考えるのは早合点です。もしあなたのPSAが30や40を超えていたりすると、きっと癌が進行し転移までしているかも・・と肩を落とされるかもしれませんが、そうでもないのです。生検の結果GS7程度であればPSAが高くとも案外転移などないものです。逆にPSAが20以下でもGS8やGS9以上だと陽性率100%であるとか意外にも進行していたりしますから、PSA値だけで病期を想像するのは無意味です。

4~10ng/mL未満は前立腺がんが発見される確率は25~30%ですが、「まだ前立腺がんではない」とするものではなく、危険域にあると考えるべきです。もし前立腺がんが存在するならば、10ng/mL未満のうちに治療を開始した方が完治する可能性が高くなります。
PSA検査|アステラス製薬

※1 NCCNガイドライン

NCCNは、全米を代表とするがんセンターで結成されたガイドライン策定組織 NCCN(National Comprehensive Cancer Network)が作成し、年に 1 回以上改訂を行い、世界的に広く利用されているがん診療ガイドラインです。日本における癌治療でもこのガイドラインに準拠していると思われます。わかりにくいかもしれませんが、一度はじっくりと読んでみてください。
→NCCNガイドライン 日本語版 | 泌尿器がん

略字の意味は以下の通りです。
RP:根治的前立腺摘除術
PLND:骨盤リンパ節郭清術
RT:放射線療法
EBRT:放射線外照射療法
ADT:アンドロゲン遮断療法

国立がん研究センター│病期と治療の選択

治療方法は、がんの進行の程度や体の状態などから検討します。
がんの進行の程度は、「病期(ステージ)」として分類します。
国立がん研究センター がん情報サービス│前立腺がん 治療
国立がん研究センター│グリソンスコア[PDF]


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すべての検査が終わり、その間に治療法も調べました。
自然と私にとっての進むべき道が見えてきました。

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