治療:トリモダリティ 滋賀医大へ

高リスク前立腺がん治療

[Brachytherapy] 密封小線源治療に賭ける

前立腺がんの小線源治療(ブラキセラピー)は医療機関によって受け入れる悪性度に差がある。多くの病院では低リスクに適用し、外照射併用でも中間リスクの患者までという場合が多い。

Googleで東京を中心に探しましたが、高リスクに対しても小線源治療を積極的に行っているとわかる病院はあまりありません。
そこで、東京に限らず高リスク前立腺がんに対しても明確な治療方針を示している医療機関を探してみると、一番気になったのが滋賀医大でした。滋賀医大の前立腺がん小線源治療のページには”高リスク症例に対して積極的にトリモダリティによる治療を行っています”と書かれており、詳しい説明も掲載されていました。

私の治療を受け入れてくれるのかどうか

そこで距離は遠いものの、滋賀医大で小線源治療をされている岡本先生に問い合わせることにしました。その結果先生からこのような返信をいただきました。

PSAのわりにグリソンスコアが高く陽性部位も多いことから要注意の癌と思います。 あまりPSAを出さない癌かも知れませんね。トリモダリティまでやらねばならないかどうかは別にして再発がおきないことを最優先に治療を考えるべきと思います

これができたのは、滋賀医大のページに小線源担当医の岡本先生のメールアドレスが掲載されていたからです。「トリモダリティが適用できるかどうか、詳しい話を伺いたい」という返事を書き、私の検査結果を添えメールを送りました。何通かのメールのやりとりのあと、診察の予約を取っていただきました。診察はお昼前とお昼を挟んで 夕刻までかかるとのことでした。診察時、持参するように言われたのは次の通りです。

病院の紹介状
これまでのPSAの値の変化のデータ
これまでのCT、MRI、骨シンチなどの画像データ(CDデータです 特に治療前のMRI画像は必須)
生検のプレパラート(生検サンプル)
生検の報告書 
各生検サンプルが 前立腺のどこから採取されたかがわかるイラストを描いてもらうこと

・・こうなれば距離など関係ありません、担当医に紹介状を書いてもらい、翌週の新幹線で西に向かいました。


医大へは、京都から琵琶湖線でJR瀬田駅下車が便利。瀬田にある餃子の王将の前で待っていれば滋賀医大行のバスが来る。降りる場所は医大正門ではなく、次の附属病院前。京都を出てから1時間ちょっとです。

トリモダリティ(小線源治療+外照射治療+内分泌治療)

トリモダリティ 滋賀医大へ

新幹線を京都駅で降り在来線で瀬田へ、瀬田からはバス15分位で滋賀医大付属病院に到着。滋賀医大は森の中の静かな場所にありました。外来には11時過ぎに来るように言われています。付属病院一階の患者支援センターで診察カードを受取り2階の泌尿器科受付へ。

滋賀医大 前立腺癌密封小線源外来

岡本先生は前立腺癌密封小線源外来となっており、通常の泌尿器科外来とは区別されていますが、受付は泌尿器科と共用です。穏やかなカラーリングの泌尿器科待合室で診察を待っていると、しばらくして「2診x番」と番号を呼ばれ、いよいよ診察です。
初めてお会いした時の先生の印象は、医師というイメージよりも、白衣を着た研究者という雰囲気です。先生からは気さくに話しかけていただき、ディスプレイを見ながら詳しい説明を聞いたのですが、私は緊張してしまい頭は真っ白、あまりその内容を覚えていません。
 
それでも雑談を交えて話は進み、直接診断に関わることでは、私のPSAやグリソンスコア、MRIなどの検査データから考えると、トリモダリティまでする必要がないかもしれない。つまり「小線源単独治療」でも大丈夫かもしれない、という話を聞き、自分が思っていたよりも癌が進んでいないのかもと、少しほっとしました。

診断:トリモダリティ治療 必須

午後、別室で触診があり、触診では前立腺に結節があるとされました。その後、再び診察室に戻って先生の話を伺いました。その間に先生は生検プレパラートの観察もしていただいたようです。その時の話では、

あなたは「グリソンスコア8と診断されているが、それよりも悪い印象を受ける、GS8というよりは10だな、シート状に近い」という話をされ、ディスプレイに表示された私のカルテには「絶対トリモダリティ」と記入されてしまい・・結局は、トリモダリティ治療必須(☆1)という診断になりました。

多くの患者さんが診察に訪れており、午前中から始まった診察は、途中何度か診察室の外で待ったりしながら午後も続き、診察が終わったのは、すっかり日が暮れる時間になっており、がらんとした病院のロビーを抜けて帰宅しました。

トリモダリティ

[診 断] 滋賀医大 前立腺癌小線源治療学講座 岡本圭生 先生
グリソンスコア:8 陽性率32%(5/16)
    陽性コアは5本、すべて4+4=8(後日、滋賀医大病理による再評価)
治療直前PSA: 3.5ng/ml(内分泌治療開始直前の値)

  • トリモダリティ: 局所(前立腺)には十分な線量BED220gyを照射するため、高リスクであっても遠隔転移さえなければ完治する。
  • 皮膜外浸潤: T2bとされているが、悪性度を考えれば微小な皮膜外浸潤(T3a)の可能性はある。しかしシードの配置によって対応する。
  • 精嚢への浸潤: 精嚢への浸潤(T3b)の可能性はあるかもしれない。必要なら対策はするが、そのための余計な検査はしない。(☆2)
  • リンパ節転移: リンパ節転移の可能性は低い。

 

”再発ゼロの前立腺癌治療を目指す”ということ

この治療法で本当に根治できるのか、この治療法が自分にとってベストなのかと、私達前立腺がん患者は、癌の治療法を決めるのに迷いに迷います。しかし、岡本先生の話を伺っていると”患者を完治させること”を本当に最優先に考えている、ということが、はっきりと伝わってきます。これは当たり前のようで、当たり前ではないことです。患者としては、治療した結果がどうなるのかに確証を得たいのだが、それはわからないと言われるのが普通です。その点、岡本先生は「基本的に診断時に転移のない方は完治させる」ですから、これ以上の安心感はないと感じました。患者は、きちんと見積もりのできる治療を受けたいのです。

再発のない前立腺癌治療を目指して

基本的に診断時に転移のない方は全員が完治すべきである。この点で、小線源療法は、高い技術をもっておこなえば尿漏れをおこすことなく「局所再発ゼロ」というゴールを達成できるきわめて有効な前立腺がん治療といえる。
→滋賀医大 前立腺癌小線源治療学講座

 

高リスクから『超高リスク』へ再評価

1 トリモダリティ治療必須
紹介状の検査データからは、「高リスクであっても小線源単独治療で大丈夫かもしれない」という話でしたが、私が持参した生検プレパラートの観察からは「より高い悪性度」と思われるため、トリモダリティ治療を受けることになりました。
「癌の悪性度」であるグリソスコアは病理医1人の判断ですから、医療機関ごとに評価に違いが出ることも少なくありません。転院した場合、通常その病院の病理医によって生検プレパラードが再評価されます。
 
後日わかったことですが、
私の癌は当初、陽性コア5本のうち2本が4+4=8で、3本が4+3=7でした。
しかし滋賀医大の病理によれば、陽性コア5本すべてが4+4=8と、より悪性度が高い評価に変更されました。ま、それでも全体の悪性度に変更はなく、先生から「一応グリソンスコア8のままだった」と組織診断報告を見せていただき、ほっと胸をなでおろしました。

滋賀医大病理診断科 組織診断報告書
前立腺癌;Gleason score(4+4), nuclear grade II
中分化相当のadenocarcinomaで、核小体の見られる円形核を持つ異型腺細胞が融合腺管を形成し、浸潤性に増生するGleason pattern4相当の病変。
    4+4(5/14mm),4+4(3/18mm),4+4(6/17mm),
    4+4(2.5/19mm),4+4(0.5/12mm) ()内は腫瘍長

この再評価により、前立腺癌のリスク分類では、超高リスクの条件の1つである”4つを超える針生検コアでグリソンスコア 8~10″に該当するため、悪性度が『超高リスク』にアップグレードされたことになります。(私と同じ日程で治療を受けた方はGS9からGS7にダウングレードされていますから、滋賀の病理の評価が厳しいわけではありません。)しかし・・『PSA3でも超高リスク』なんて、私くらいなのではないだろうか。

2 余計な検査はしない:
被膜外浸潤と精嚢への浸潤については、直腸内コイルMRIで検査する病院もあるが、滋賀医大岡本先生の場合は「余計な検査はしない」、病期から予想されることに対しては対策をするというのが基本のようです。おそらく、微小な浸潤や転移は、あったとしても画像では見つからないかもしれないから、ということだと思います。


高リスクに小線源を適用する病院は限られる

一般には低リスク前立腺癌に対する良い治療法とされているのが小線源です。しかし、一部の医療機関では中間リスクや高リスク患者に対しても小線源単独、あるいは小線源と外照射を組み合わせた治療が実施されています。
 
この違いはなぜ起きるかと言うと、「一部の病院が無理な治療をしているから」とかではありません。小線源治療を高リスクにまで適用する医療機関では、「前立腺に非常に高い線量を照射すれば高リスクであっても根治が可能である」という考えから、シード線源を前立腺被膜ぎりぎりに配置(リアルタイムによる辺縁配置法)するなどして尿道への線量を低減、さらに直腸への照射も極力避ける配置とすることで有害な副作用を減らすなどして、一般の小線源治療よりも遥かに高い線量を照射する技術を確立しているからです。
また高リスク患者の多くで問題とされるのが「被膜外浸潤の可能性を否定できないこと」ですが、ほとんどの場合、その浸潤は数ミリ以内であることから、これに対しても、この辺縁配置法によって浸潤部分にも照射が可能であるとされます。
 
この技術によって「高リスク前立腺癌」に対応できるのですが、多くの経験が必要であるため容易ではないと聞いています。一般の医療機関ではそこまで最適化されたシード線源の配置ができないため高い線量を照射することができません。このため高線量でなくても治療効果が見込める低リスク(あるいは外照射を併用しても中間リスク)にしか適用していないというのが現実です。
 
小線源に外照射を併用しホルモンを追加した治療がトリモダリティですが、ホルモン療法や外照射による副作用を避けるため、小線源単独でも超高線量を照射する技術もあり、滋賀医大ではトリモダリティに近いレベルの高線量照射を小線源単独でも実現し、中間リスクだけでなく高リスクの一部にも適用しています。

前立腺がんの小線源治療をどこで受けるのか?

私は関東在住です。それなのに東京ではなく、どうして滋賀まで足を運ぶことになってしまうのか、疑問を感じる方も多いでしょう。先に「東京では、高リスクに対して納得できる治療が受けられる病院がなかったので滋賀医大に決めた」、というようなことをあっさりと書いていますが、もちろん随分と調べた上での話です、その選択には悩みました。
当時私は小線源治療を受けたいと考え、癌研有明、順天堂大、自治医大など、私の知っている有名な病院を調べましたが、いずれも小線源には力を入れていない様子でした。さらに調べると、「慈恵医大」と「東京医療センター」なら高リスクに対しても治療が行われていると知りました。
しかし慈恵医大は、外照射、LDR、HDRと広く放射線治療をしているものの、高リスクではHDRに力を入れているという印象を受けたことと、なんとなく敷居が高いと感じたこと。また、東京医療センターはLDRの実施件数日本一ですが、高リスクの患者比率から推測すると中間リスクに注力しているように感じたことから断念、距離に関係なく受け入れ先を探すことにし、結局一番気になっていた滋賀医大に決めました。
 
今だからわかることですが、首都圏ではこの他、昭和大学江東、埼玉病院、西日本では、奈良県立医科大学、徳島大学病院。山口県済生会下関総合病院。北九州では、戸畑共立病院などでも高リスク前立腺がんに対する小線源治療が行われています。しかし医療機関ごとに治療内容は異なり治療成績も違います。ある程度はその違いもわかるのですが、ここで紹介できるほど確かではありません。このため、ここでは自分が治療を受けた滋賀医大に絞った情報としています、ご理解ください。

当時はなかった情報ですが、放射性医薬品を扱う日本メジフィジックスから有用な情報が提供されています。
トリモダリティーを積極的に実施している施設をご紹介します。小線源療法は、全てのリスク(低・中・高リスク)の前立腺がんで適応されます。
トリモダリティーを積極的に実施している施設|日本メジフィジックス

滋賀医大 前立腺癌密封小線源外来について

正確には▷滋賀医科大学医学部附属病院です。岡本先生の診察は▷前立腺癌密封小線源外来として通常の泌尿器科の外来とは区別されていますが、受付は2階の泌尿器科、診察も泌尿器科ブース内です。泌尿器科では他の治療法も行われています。

2018年から岡本医師の診察室が1階放射線科に移動しました。
滋賀医大で小線源を希望するなら、▷前立腺癌小線源治療学講座 ▷岡本圭生先生宛の紹介状を持参してください。

また、前立腺癌の患者会▷S友ネットで話題に出るS医科大がどこかと言えば、この滋賀医大です。S医科大、O先生、あるいはS医大、O先生、K先生と言われるのも、岡本先生、河野先生のこと。

「トリモダリティ」という言葉

小線源治療で最も有名な医師Dr.Stoneが、日本で小線源治療の指導した時、前立腺がん治療において、ホルモン、小線源、外照射という3つの治療法を計画的に組み合わせた治療法を「Trimodality」として紹介したと聞いています。このため「トリモダリティ」では通じない泌尿器科の医師もいます。一般的には、外照射併用小線源療法の1つで良いと思います。


トリモダリティ体験記

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