茨城筑波大 全摘から2年半で復活、65歳

前立腺がん治療を経験された方の体験談 古河市 Tさん

がんが見つかったきっかけは何でしょう

健康には普段から気をつけています。毎年人間ドックを受けていますが2012年秋の検診でPSAが5を超えていることがわかり再検査を勧められました。

そこでS市のJ医科大で精密検査を受けたところ、やはりPSAは5.6と基準値の4よりも高いことから生検を勧められ、その年の11月に2泊3日で生検を受けました。そして生検の結果がわかる日、診察室で医師の口から「残念でした前立腺癌です」という言葉で告知を受けました。前立腺癌って言われただけでもショックなのに、どうして「残念でした」がつくのか、余計だろうと思いました。

検査結果
PSA: 5.6
グリソンスコア: 7
陽性率: 
触 診: 
年 齢:65歳
リスク分類: 中間リスク

どんな治療を勧められましたか?

癌と診断されたあとの診察で、残念でしたの医師から「手術にしますかー、放射線にしますかー」と聞かれたのですが。その聞き方が「他人事」というか何か事務的な感じで、患者の気持ちをまったく考えていないような口調でした。これでは信頼するどころか、この病院でちゃんとした治療が受けられるのかどうかさえ不安になりました。J医科大は非常に優秀な学生が集まる大学として知られており、この地域では一番信頼できる病院だと思って診察を受けましたが、こんな残念な医師がいるようではダメ、他の病院で治療することにしました。

あなたが選んだ治療法は?

そこで、いっそ陽子線治療が良いのではないかと考え、筑波大学付属病院で診察を受けました。しかし筑波では、あなたの進行度で陽子線治療を受けるには先行してホルモン療法が3ヶ月間必要と言われました。しかし私はホルモン治療を受けるのがいやだったので陽子線治療はあきらめることにしました。
付属病院では、もう1つの選択肢の全摘手術を提案され、詳しい話を聞いたあと全摘手術を受ける決心をしました。

治療法:全摘手術(開放)
    神経温存
術後PSA:0.007 安定
医療機関:筑波大学付属病院
手 術:2013年3月

その治療法に決めた一番の理由は何でしょう

陽子線治療は男性機能を温存できると聞いていたので、本当は陽子線治療を受けたかったのです。しかし事前に受けるホルモン療法の副作用で男性機能を失うのではないかと不安でした。担当医師は若い先生でしたが、説明が丁寧かつ熱心であり、全摘手術でも勃起神経を温存できる見通しである、と言っていただいたことから任せてみようという気になりました。

あなたからみなさんに伝えたいこと

手術の結果、全摘手術にはつきものの尿漏れも、私の場合は早期にほぼなくなり現在の生活に支障は出ていません。たまにくしゃみをした時などに少し漏れる感じがするくらいです。手術後のPSAも低い値で安定していますから良い医師に恵まれたと感謝しています。

男性機能の件では、「少なくとも片方の勃起神経は温存できる見通しである」ということで手術を受けましたが、幸いにも手術後「両方の勃起神経を温存できましたよ」とそっと聞かされた時にはとても嬉しかったのです。

術後まもなくEDを防ぐためシアリスを処方され、なんとリハビリとして放出することを医師に勧められていました。しかし試してみると何も出ないので驚きました。
事前の医師の説明で「精子は出なくなる」とは聞いていましたが、それはパイプカットをした方と同様に射精はできるが、その中に精子はない、ということだと思っていたのです。それがそうではなく出るものが出ないとわかりショックを受けました。

もう自分は普通の男に出来ることが出来ないんだ、という悔しさを感じました。もし術後のそんな状況を事前にわかっていたなら、この手術を受けていたかどうかわかりません。それでも最近はリハビリの効果もあってか、シアリスなしに朝や夜でも元気になっていることがあります、試しに放出してみると(実際には放出されるものはほとんど・・・ですが)不思議なことに以前のような射精感もあるのです。

古河市 T


 このページは直接インタビューしたものを、私が書き起こして掲載したものです
男性機能の件は答えにくかったと思いますが、ちゃんと話をしていただきありがとうございます。このへんのことは、あまりネットに掲載されていないことなのですが、私自身は治療法を選択する上でも重要なことと思っています。
 
精液のほとんどは前立腺と精嚢で作られますが、全摘手術ではその前立腺と精嚢を摘出します、精子を作る睾丸はそのままですがその量は精液の1割にも満たない量で、しかも前立腺と精嚢を摘出後、膀胱と尿道を直接吻合するため、その出口もないのです。
医師はこれらのことをあたりまえのように思っていますから、手術をすれば「精子は出なくなる」という説明で患者も同じように理解するだろうと思ったのかもしれません、しかしそれは医師の思いこみでしょう。術前の医師からの説明がうまく伝わっていなかったのは非常に残念ですが、勃起神経を温存、全摘手術後のPSAの値も安定しているとのことですから、手術自体は良い結果を出していると思います。
Tさん、詳しい話をしていただき、ありがとうございます。

参照
筑波大学附属病院|腎泌尿器外科