小線源治療も手術である、ということ

小線源治療(密封小線源療法)は、前立腺に埋め込んだ長さ5mmほどのカプセルから照射される放射線によってがん細胞をたたきます。

「小線源療法」と「摘出手術」の違いを考えてみる

全摘手術はがんを完全に摘出すれば一応成功

全摘手術は、前立腺と精嚢を切除し、それ以外のものを温存する技術です。難易度の高い手術であると聞きますが、たとえ経験の少ない医師であったとしても病巣を全て取り除ければその手術は一応成功。根治(完治)が期待できるはずです。もちろん経験の多い医師のほうが、根治できる可能性は高く、予想されるさまざまな合併症も少ないに違いないでしょう。

小線源療法は、シード線源を適切に配置することが必須

それに対し小線源療法は、取るのではなく前立腺にシード線源(放射能を封入したチタニウムのカプセル)をどう配置するかという技術。成功の鍵とも言える線量分布はその配置によって決まりますから、もしそれが適切でないと「完治しない、あるいは障害が起きる」かもしれません。そこまで極端ではないとしても十分な線量が照射できないと再発が起きる心配がつきまといます。高い線量を安全に照射するには、動きやすい前立腺に対して辺縁に正確にシード線源を留置する必要がありますが、医師の技量に頼る面があり多くの経験が必要と聞いています。小線源療法は放射線治療でありながら、シード線源の留置は手術そのものです。


これは小線源手術から2年半後に撮影した造影CTによる画像です。白い小さなシード線源がいくつもあるのがわかるでしょう、その上にあるのが膀胱です。シード線源は今では放射線も出していませんから単なるチタニウムのピンです、またそのままずっと埋め込まれたままですが、生活に影響はないとされています、もちろん何も感じません。

技量がPSA非再発率に直結

小線源の場合、手術を行う泌尿器専門の医師と、それを計画する放射線治療の専門医の技量が完治率(PSA非再発率)に直結しますから、医療機関の実績を確かめたいところですが、なかなか難しいですね。あらかじめ信頼できる医師の名前がわかっていれば、その先生宛の紹介状を持っていくだけですから簡単です。

今回、小線源挿入手術を受けてみて「小線源は放射線治療でありながら、それを実施するのは手術」だということを強く実感しました。手術は放射線科の医師がディスプレイに映し出された前立腺の超音波の画像を見ながら、シードの挿入位置をテンプレートの座標で示します。泌尿器科の医師はそのガイドによりシード線源を留置、再び放射線科の医師が配置されたシードの線量分布を確認する、というように二人の医師の連携によって進めます。
 
しかし、柔らかい前立腺に対してシード線源を精度良く配置(留置)するのは難しく、経験や技量の差によって治療成績に差が出ます。従来から多くの病院で「小線源は高リスクに適用できない」とされていますが、それは医師の技量の問題であり低い照射線量しか与えられないためです。高い照射線量を安全に与えられる医師なら高リスク、超高リスクへも対応できます


密封小線源療法(ブラキセラピー)
ここでは単に小線源療法と書いていますが、中間リスク以上の前立腺がんでは、一般的に小線源単独ではなく外照射併用となる病院が多いと思います。ただし、私の主治医の話では高線量インプラントが可能であるため、ここでは少なくとも2/3ほどの中間リスクに対しても小線源療法単独で治療しており、それでも全く問題なく完治させることができる、と聞いています。さらに現在ではホルモン療法の悪影響を避けるため、それをできるだけ使わない方向だそうで、高リスクの一部に対しても、小線源単独や、外照射+小線源による治療をする場合もありますから、必ずしも高リスク=トリモダリティとは限りません、どちらかといえばトリモダリティは超高リスクへの対応です。
参照:
→滋賀医科大学 | 前立腺癌小線源治療学講座
→前立腺がんの治療について|ブラキ・サポート

前立腺や精嚢などにシード線源:精嚢へのシード線源挿入は一部医療機関のみでしか実施されておらず、一般的な治療ではありません。またこの病院では連結シードの使用はしていないとのこと。

トリモダリティ体験記

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