前立腺、精嚢、膀胱の関係

前立腺がんの腫瘍マーカーとしてPSAという項目があるのは知っていましたが、PSAとは何だろう、そもそも前立腺の働きや、それがどこにあるかも正確なところは知りませんでした。皆様にも、これからの話しを理解していただくために、前立腺と精嚢、膀胱の関係を説明します。

前立腺、精嚢、膀胱の関係

前立腺は膀胱の出口側、つまり尿道の始まる部分をぐるりと取り囲んでいる臓器で、大きさはクルミ大。尿道はそのまま陰茎につながっており、おしっこは全て前立腺内を通過します。
また、前立腺はそれに付随するように位置する精嚢と射精管で繋がっており前立腺内部で作られる前立腺液と混合され精液として放つという男としての大切な機能を担っています。

しかし言葉だけではなかなかイメージしにくいので、

 ミニトマトを前立腺に、膀胱をオレンジとして説明

ミニトマトにストローをプチっと刺して貫通させ、その先をそのままオレンジに差し込むと、膀胱に前立腺がくっついた状態になる。ストローは尿道、もう一方の端は陰茎につながっています。緑のピーマンは前立腺に付随するようにある精嚢。

射精のしくみ

刺激を受けたなどにより必要時には、トマト果汁は、ストローで貫通した部分にあいている小さな穴からストロー内部に放出される、これが前立腺液。これとは別に精巣(睾丸)で作られた「精子」も輸精管という細いパイプで前立腺近くまで運ばれ、ピーマン(精嚢)で作られる「精嚢液」と共に前立腺内の射精管に送りこまれ、前立腺液と共に精液として前立腺内の尿道(つまりストロー内)に放出されるシステムになっている。この時、膀胱側は内尿道括約筋によって閉じられており、外尿道括約筋は開かれた状態になるため、放出された液体は外尿道括約筋を通過し陰茎(外尿道口)から体外に射出される。

排尿と射精

通常は、外尿道括約筋は膀胱内に尿を貯めるために使われていますから、その括約筋を緩めれば尿は「おしっこ」として体外に排出されます。つまり、膀胱につながる尿道を普段は排尿に、必要時には精液を射出するために使うためのスイッチングを行っているのが前立腺と尿道括約筋です。

前立腺、精嚢、膀胱、直腸、尿道

膀胱と前立腺、尿道の位置がわかったところで、このCGをみていただけるとより位置関係がはっきりします。前立腺(Prostate)の上に膀胱、左に直腸、下に横たわっているのは尿道及び陰茎海綿体です。


画像引用:Accuray CyberKnife Prostate Cancer Animation

Bladder:膀胱 Prostate:前立腺 Tumor:腫瘍 Urethra:尿道 Rectum:直腸

拡大した映像では、中心に前立腺があり、中心を通る尿道は下の尿道海綿体に入っています。そこに見える丸いものは尿道球腺。赤唐辛子のように見えるのは精嚢です。腫瘍は1つの塊としてグレーで表示されていますが、前立腺癌は多発性とされているため、実際には、ぽつんと1つ存在する、というような単純な分布ではありません。


画像引用:Accuray CyberKnife Prostate Cancer Animation

前立腺肥大とは
前立腺が肥大すると排尿障害が起きるのは、なんらかの原因で前立腺の中身が膨れたから。前立腺は膨らみ容積を増すが、皮につつまれているため、肥大するほど内部の圧力が高くなり中心部にある尿道が圧迫され排尿障害が起きる。
しかし癌によって前立腺が膨れる場合は、癌の多くが中心よりも外側に近いあたりに発生するため、尿道を圧迫するほどにはならず排尿障害が起きないことも少なくない。

精液の成分のほとんどは精嚢液と前立腺液

精子は睾丸で作られるというのは常識ですね。これまで、その精子が単に放出されるのが射精と思っていましたが「大まちがい」でした。実際には、精液に含まれる精子の割合は非常に少なく、そのほとんどが精嚢液及び前立腺液で、先に説明したように、それらが前立腺内で混合されたものが精液でした。さらには前立腺のすぐ近くにある尿道球腺液も加わります。

以前から・・生体はなぜ排尿と生殖のシステムを兼用させているのか疑問でしたが、図を見ていてわかりました、たぶん普段は尿を通すことで尿道内で細菌などの繁殖を防ぎ清浄に保つことができるから、なのでしょう。そのためには腎臓は無菌の尿を排出する必要があることになる。知れば知るほど私達の生体システムは非常に良くできているなと、いまさらながら関心しました。

しかし関心している場合ではありませんね。この前立腺で癌が発生した場合は、前立腺と精嚢を摘出し、尿道を直接膀胱に吻合するため、これらのいっさいの機能を失い排尿専用になってしまいます。また放射線治療の場合も、前立腺や精嚢自体はそのままでも、放射線によってその機能を失いますから、男として寂しい気持ちにさせられます。

摘出手術後の膀胱と尿道の関係

摘出手術では、前立腺と精嚢を摘出し膀胱と尿道を吻合する。これは従来の開放手術でも最新のダヴィンチでもやることは全く同じです。言葉ではピントこないかもしれません、図で説明します。
手術前の状態はこれ、主に「外尿道括約筋」によっておしっこを我慢します。

これからトマト(前立腺)の両端を内部のストロー(尿道)ごと切除し、それに付随する精嚢と共に摘出します。その後、少し短くなったストローとオレンジ、つまり尿道と膀胱を直結させます。これを吻合といいます。写真にはありませんが、この時、前立腺を包むように存在する勃起神経と、さらにその周辺にあるリンパ節の多くを切除(リンパ節郭清)も実施されます。結果、このように随分とさっぱりしてしまいます。
↓ 手術後

前立腺や精嚢が失われても、人の生存には影響しないという考えから、前立腺全体を摘出してしまいます。他の臓器では全部を摘出すると重大な障害が出たりしますから、これは他の癌治療とは大きな違いです。癌を含む前立腺全体を摘出するのだから安心という気持ちも、わからないでもないのです。
 
前立腺が尿道ごとなくなるため、膀胱と尿道を吻合するとオレンジ(膀胱)はやや変形して伸び、尿道も少し体内に引き込まれます。これにより陰茎がやや短くなるとされますが、時間経過とともにほぼ元にという医師の報告があります。この時、必ず「外尿道括約筋」を残しますが、もしそれを損傷すると深刻な尿もれに悩まされることになる。
先の図では省略しましたが、膀胱と前立腺のあいだ(尿道の移行部)にも内尿道括約筋という不随意筋があり、それが収縮することでも蓄尿の働きをします。しかしこの内尿道括約筋は手術で温存されないのが普通(詳しくは知りません、要確認?)のようで、精密な手術を行ったとしても尿は漏れやすくはなるはずです。

 

※ 前立腺のしくみを画像検索でも確認してみましょう。
Google画像検索:前立腺 精嚢 精巣


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前立腺とは?

前立腺はみかんのような層構造をしていて、尿道のまわりの内腺(みかんの実にあたる部分)と被膜付近の外腺(みかんの皮にあたる部分)に分けられます。
最近では辺縁領域、中心領域、移行領域の大きく3つのゾーンに分けられることも・・
前立腺とは?|アストラゼネカ


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前立腺と膀胱、精嚢の関係を理解していただけましたか?
次はMRI検査と前立腺生検の話に移ります。

トリモダリティ体験記

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