担当医から出された宿題への解答

「放射線治療に対する疑問点」への答え

癌を告知された当時、担当医に「他の病院で放射線治療が適用できるかどうかの診察を受けたい」という話をした時、担当医から「放射線治療に関して、いくつかの疑問がある」という話を聞いたと書きましたが(前立腺全摘手術はしない・・と決めたを参照)、それに対する答えを、はっきりとは書いていませんでした。難しい宿題を出されたようなもので、答えに自信が持てるようになるまでに時間がかかりました。


答えを探す:森の中でみつけた怪しげな渦巻き、実はこれも植物の種子なのですが、この名前を調べるのは簡単ではない、インターネットには膨大な量の植物の情報もあるのだが、問題はそのキーワード。私は「毛むくじゃら」「種子」というキーワードを思いついたが、検索してみると犬ばかり出る。そんなノイズを除去するには -犬 として画像検索すればいい。つまりこう→毛むくじゃら 植物 種子 -犬。多くの画像から似ているものを探してみる、クレマチスの種子に似ていることに気づけはほぼ正解!、実際にはキンポウゲ科の植物である「カザクルマ」。文字検索ではなかなか探せないものでも、画像検索なら、案外時間はかからない。癌の情報だと文字検索を使うのが普通だとは思うが、画像検索も試してみると良い。

最初の担当医から指摘された疑問点1

1.放射線照射でも消滅しないがん細胞がある可能性があると考えている。

放射線治療を受けた患者にとっては、想定したくないことなのですが、外照射治療ではIG-IMRTやVMATによって限界近くまで照射線量を上げた場合でも、前立腺に再発(局所再発)が見られる場合もあることから、一般的にはその通りだと思う。ただし、小線源単独での高線量照射やトリモダリティによる高線量照射では、非常に高い線量を照射するため、全ての癌細胞を消滅させられるという考えもある。つまり、この問題が起きるのは照射線量が不足しているからであり、高いBEDを照射することにより解決できると信じます。

最初の担当医から指摘された疑問点2

2.インターネットでは放射線が夢のような治療のように書かれていることも多いが、手術同様障害も起きるし、男性機能もやがて衰える。

放射線治療によって直腸出血や尿道痛、頻尿などの障害が起こるリスクは承知しているが、手術の場合の合併症や高い尿漏れリスクに比べれば、放射線治療のほうが楽だと思える。
また、最近「理想的な治療」であるかのように書かれているのは放射線ではなくダヴィンチ(摘出手術)のほう。機能温存に優れるとされますが、従来の開放手術と摘出方法が違うだけで摘出する内容は同じ。現時点では手術の成績を向上させているというわけでもありませんから、期待のほうが上回っていると思います。
 
男性機能に関して、高リスク前立腺がんを前提に考えると、ある程度進行した癌の場合は手術療法での勃起神経温存は無理であり、その場合、永久に男としての機能が失われることになるのが耐え難い。しかし神経は放射線に対して比較的強いとされており、放射線治療では被膜外浸潤があるというような癌が進行したレベルであっても、男性機能が完全に失われるというようなことはない。この点で優れている。

最初の担当医から指摘された疑問点3

3.小線源治療ではリンパ節への転移に対して、また精嚢に浸潤している場合に対してどのように対応しているのか?手術ではリンパ節郭清時にその転移の有無を調べるが、高リスク症例ではリンパ節転移が少なくないことがわかっている(記憶が曖昧だが、手術後リンパ節陽性の患者は10%とか20%とかの数字を聞いたと思う。)

高リスク患者で、画像上は確認されていなくても「リンパ節転移のリスクが高い」と判断された場合は、小線源に併用する外照射治療において、通常より照射野を大きくした全骨盤照射を行ない微小なリンパ節転移を消失させようという試みがあります。しかし多くの高リスク患者では、通常、前立腺と精嚢基部に対する照射しか行われません。
この場合、指摘通りだとすると、リンパ節転移のリスクが低いと診断された患者の中にも、リンパ節転移の患者がある程度含まれると思われますから、一定数の患者で再発(リンパ節転移)が起きてしまうはずです。
 
しかし、滋賀医大の実績(2005年から2013年までの、高リスク患者143名のトリモダリティにおいて約5年経過後の観察)で、リンパ節転移の患者は出ていないというデータがあります。この高リスク143名において、どうしてリンパ節転移の問題が起きていないのかが不思議なところ。


不思議?!: 私の田舎ではクマンバチと言うが「クマバチ」が正しい。ご存じの方も多いとは思うが、実はこのクマバチ、このずんぐりとした体と小さな翅では「航空力学的に、飛べるはずがない」とされ、なぜ飛んでいるのかは長年の謎だった。・・・「彼らは、飛べると信じているから飛べるのだ」という説があったと言われるが、そんなわけはないだろう。現在はレイノルズ数(空気の粘度)が計算に入っていなかったことが原因と判明している。
飛べないはずだと言われても、飛んでいるハチはそんなこと気にもしない。起きるはずだと言われている転移も、事実起きていないのだから気にしなくてもいいのではないかと思える。理由よりも、今それが起きていないってことが私には大事だった。

起きるはずなのに起きないリンパ節転移

その理由として、仮説ですが、小線源単独治療によってなんらかの理由でリンパ節転移が消失している。あるいは、外照射併用療法で通常の照射でもリンパ節転移が消えている。さらに、放射線とホルモン治療を併用したことによる影響(手術の場合にホルモン治療を併用しても根治性に変わりはないとされているので、ホルモン単独でリンパ節転移を消失させる力はないと考えて良いと思う)などの可能性がある。また、手術で見つかるとされるリンパ節転移の中に、転移ではないもの(偽陽性)が多く含まれているという可能性もあるかもしれませんが・・確かなことはわかっていません。

精嚢浸潤に対して

主治医によれば、精嚢浸潤に対しては、MRIなどの画像検査で何も写っていない場合でも、総合的に判断して対策をするかどうか決めるとのことでした。精嚢浸潤への対策は精嚢に対してシード線源の留置(※1)を行うのですが、シード単体を留置するのが難しい部位であるため、これを実施できるのは小線源治療を行っている病院のうちの一部です。

前立腺がんの被膜外浸潤

リンパ節転移、精嚢への浸潤以外にも、前立腺の被膜外浸潤も考えられます。これはシードを辺縁配置することで、前立腺の外側数ミリにも照射されるため、それによって癌が抑えられるとのことです。さらに広い範囲を照射する必要があれば外照射を併用します。

精嚢に対してシード線源の留置

精嚢に対してシード線源の留置は、あまり実施されていないようで、事実、前立腺癌治療に関連する泌尿器科の医師が集まる学会で、救済小線源治療において「精嚢へのシード線源の留置」という方法が示された時、「どのようにしてそれを行うのか」という質問が医師から出たことがありました。シードを精嚢内に単純に留置しただけでは精液とともに排出されてしまうから、それをどう解決するのか、連結型シードを使って行うのか?、という質問でしたが、それくらい例外的なことのようです。精嚢浸潤に対しての積極的な対策はLDRよりもHDRによる照射のほうが一般的かもしれません。

トリモダリティ体験記

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