前立腺がん治療を経験された方の体験談 大阪 MH さん
がんが見つかったきっかけは?、また、どんな治療を勧められましたか?
会社の健康診断の有料オプション検査で受けたPSA が4.25でその後、精密検査としてMRIを受けたが異常なしとの事で3年間経過観察でした。その間、3ヶ月に一回、PSAを取り、徐々に数値が上昇し、去年10を超え、14.3まで上がりました。それで昨年末にMRIを再度撮り、影が見つかったという事で年末に生検をしたところ、12箇所取った最後の一個にガンが見つかりました。今年に入って転移の有無を調べるために、骨シンチグラムと造影剤CT検査を受けて26日に結果を聞きに行きます。その時に治療方針の話になると思います。
PSA:14.3
グリソンスコア:7
陽性率:8.3 %(生検 12本中陽性 1本)
T分類:
診断時年齢:65 歳
触 診:
あなたは、どの治療を選びましたか?
治療はこれからですが、先生は切除を勧められていますが、知人から重粒子線治療の話も聞きました。今週、厚生労働省が前立腺ガンの重粒子線治療を4月から保険適用するというビッグニュースがありました。保険適用という意味は金銭上の負担が大幅に減少するという事以外にその実績が認められた、との事でもありますよね。また、地元大阪に初めて重粒子線治療センターが春に力という話もあり、ちょうど良いタイミングかなと思っています。
大阪 MH
その後のご連絡をいただきました
大阪MH 2018年3月1日 16:43
上の投稿をした大阪MHです。
転移は無しとの検査結果でした。また、グリソンスコアは7でした。
そこで切除にするか、重粒子治療にするかとなりました。私のPSAでは小線源は受けられないとのことです。大阪重粒子センターに期待したのですが、開院は3月、治療開始が10月とのことです。10月まで待てるのかというのと、その後の転移時の再治療と切除による尿漏れリスクを考えて、最終的に切除手術をすることに決めました。尿漏れのリスクは個人差が大きいという事で、手術前から必要な筋肉の訓練を始めることにしました。入院手術は2か月後ということで、それまでの自由な生活を楽しむことにしました。先生曰く、ダビンチで手術をするので退院後すぐにゴルフもできるよ、という事でしたが、本当でしょうか。退院の2日後と2週間後にコンペがあり、エントリーしています。
大阪 MH
再度のご連絡 ありがとうございます
最終的に切除手術をすることに決めました、とのこと。
みなさん考えかたはそれぞれ、いろいろ調べ迷われた上での決断でしょうから、尊重すべきことだと思っていますが、2点補足させていただきます。
私のPSAでは小線源は受けられない
とありますが、これはMHさんの受診している病院ではPSA10以上の患者には小線源治療をおこなわないということなのでしょう。実際に多くの病院ではPSA10未満とか、グリソンスコア6,あるいは7迄と決められているようです。小線源治療の大きな問題はまさにここ、小線源によって高い線量を局所に与えることができれば、高リスクであっても根治可能なのですが、その技術が多くの病院にまで広まっていないため、いまだ低リスクと一部の中間リスク迄としている病院が多いのです。現状で、小線源治療を受けようとすると、高リスクであっても小線源治療を実施(外照射併用を含む)している病院を選ぶほかありません。
先生曰く、ダビンチで手術をするので退院後すぐにゴルフもできるよ。
ダビンチについては、「癌など手術で摘出するに限る – 前立腺全摘」のページで書いていますが、「ダビンチだから大丈夫」というようなことを医師に言われると、ダビンチが夢のような治療法に感じますが、摘出手術には違いありません。手術療法の尿漏れは、退院時に良くなっている方から改善するまでに数ヶ月を要する方など様々と聞きます、また尿漏れが止まった方でも、力を入れた時にはわずかに漏ることもあると聞きますから、実際のゴルフには尿漏れ吸収パッドが必要になるのではないでしょうか。
インタビューへの回答 ありがとうございます
調べてみると、厚生労働省は17日、4月から前立腺がんに公的医療保険を適用する方針を決めた。というニュースがありました、これは前立腺癌治療に関する大きなニューですね。また、地元大阪に初めて重粒子線治療センターが春に、というのはこのことですね。→2018年に大阪の都心部で最先端の重粒子線がん治療がスタートします|大阪重粒子線センター
粒子線治療の保険適用拡大 前立腺と頭頸部のがんに
厚生労働省は17日、がん粒子線治療について、4月から前立腺がんや頭頸部のがんの一部に公的医療保険を適用する方針を決めた。
粒子線治療は原子核である陽子や、より重い炭素の原子核である重粒子を加速器でビームにし、がん細胞に当てて殺す治療法。従来のエックス線治療に比べ、ピンポイントで患部に照射することができる。
前立腺がんは、粒子線治療を受ける患者数が年間約1700人と最も多いが、先進医療に指定され、必要な検査代や入院費など一部にしか保険が使えない。28年にも保険適用が検討されたが「他の治療法に比べて優位性が認められない」と判断され、見送られていた。
産経 ニュース|粒子線治療の保険適用拡大 前立腺と頭頸部のがんに
重粒子線治療と放射線治療
前立腺癌と言われて、最初に感じるのは「転移があるかどうか」という恐怖に近い不安でしょう。その次にどんな治療を受けるかを考えるのですが、多くの治療法があり誰でも迷います。しかし、最も魅力的に感じるかもしれないのが、この重粒子線です。ただし理論的に優れているとされる重粒子線治療ですが、非常に巨額の投資が必要とされるため施設が少ないこと、いまだに従来の放射線治療以上に良い成績であると立証されていないこと、保険が適用されないことなどにより、一部の方にしか利用されていませんでした。
しかし、保険が適用となると今後の治療の流れが変わるかもしれません。そこで、重粒子線は放射線治療と、どう違うのか改めて考えてみます。
重粒子線は最先端の技術である、理論的には非常に優れている
IMRTなどの放射線治療は体表面では強く作用し、深いところではその線量が弱まるのに対し、重粒子線や陽子線は深いところにエネルギーのピーク(ブラッグピーク)を作ることができるため、非常に優れた特性であるとされます。
しかし、IMRTでは従来からガントリーの回転照射が可能であるため自在な照射が行われていますが、重粒子線の場合は照射方向を自在に変えるのは難しいとされ、従来は2方向固定でした。ただし、最新の施設であればこの点も改良が進んで、自在な照射が可能になっているかもしれません。(ご確認ください)
システムがいかに高精度であったとしても、照射精度は別の要因で決まる!
粒子線や放射線の治療システムが、1ミリ単位の非常に高精度な照射が可能だとしても、前立腺があるのはやわらかい人体の中です。前立腺は周辺臓器の動きの影響で位置が日によって数ミリ変わる、あるいは前立腺自体が少し変形することもあります。日々の動きに対しては治療直前に内蔵CTなどを使った画像誘導(位置合わせ)により解決できます。
しかしながら、前立腺は照射中であっても、時間の経過と共に少しずつ動くとされます、同じ位置であることが期待できるのは2分程度とも聞きます。この動きや変形に対して照射中に自動で追従することまではしていないため、照射精度は、システムの精度よりも”人の体の臓器の位置や形状の変化がどれくらいあるか”によって決まってしまうと思われます。
前立腺より数ミリ以上大きな範囲を照射する必要があり、この時の、おもに直腸に対する必要のない照射の副作用が問題
「治療中の前立腺の位置や形状の変化」は照射直前の位置合わせをいくら高精度に行ったとしても、解決できる問題ではないため、照射野(照射範囲)がけっして前立腺をはずれないようにするためには、照射野を「照射を必要とする範囲」より数ミリ以上大きくするなどして対応するしかありません。照射野を皮膜外浸潤(その多くは前立腺の外側の数ミリ程度)に対応させるには、さらにそれより数ミリ以上大きい範囲を照射する必要があります。
この数ミリ以上のマージン領域が周辺臓器、特に前立腺に近接する直腸に対する必要のない照射となります。この照射によって極端な場合には直腸に穿孔が起きることがあるのですが、そうなっては困ります。そこで、そうならない線量、つまり周辺臓器の副作用を許容できる限界の線量が、照射線量の限界となってしまいます。粒子線がいかに強力であったとしても、このことにより、同じ精度のシステムであれば放射線も粒子線も、局所への効果はそう変わらないことになります。
照射線量は「根治に必要な線量はどれくらいか?」で決まるのではなく、周辺臓器の許容限界の線量で来まる
放射線治療(重粒子線を含む)は照射線量が高いほど根治性が高くなりますから、特に高リスク前立腺癌に対しては、必要十分な、できるだけ高い線量を照射すべきです。しかし、放射線治療における照射線量は、先に書いたように「根治に必要な線量はどれくらいか?」で決まるのではなく「周辺臓器の副作用を許容できる限界の線量」で決まってしまうという点が、粒子線に限らず放射線の外照射治療に共通する難点です。
重粒子線や陽子線は、最先端の技術であり「理論的に非常に優れている」とされていても、この問題を解決できないため、実際の治療成績において「従来のIMRTなどの放射線治療よりも格段に良い成績を出せるか?」というと・・それは難しいかもしれない。
現実に重粒子線や陽子線治療を受けようとされる方は、5年以上の非再発率がIMRTと比較してどれくらい違うのか、実績に基づいた話を聞いてから治療の決断されたほうが良いでしょう。
上の投稿をした大阪MHです。
転移は無しとの検査結果でした。また、グリソンスコアは7でした。
そこで切除にするか、重粒子治療にするかとなりました。私のPSAでは小線源は受けられないとのことです。大阪重粒子センターに期待したのですが、開院は3月、治療開始が10月とのことです。10月まで待てるのかというのと、その後の転移時の再治療と切除による尿漏れリスクを考えて、最終的に切除手術をすることに決めました。尿漏れのリスクは個人差が大きいという事で、手術前から必要な筋肉の訓練を始めることにしました。入院手術は2か月後ということで、それまでの自由な生活を楽しむことにしました。先生曰く、ダビンチで手術をするので退院後すぐにゴルフもできるよ、という事でしたが、本当でしょうか。退院の2日後と2週間後にコンペがあり、エントリーしています。
– – – – – – –
[この内容は、本文中に転載済]
この内容は、本文中に転載させていただき、本文中でコメントを書かせていただきました。
経過をご連絡いただき、ありがとうございます。治療法の選択をどうするか、誰もが頭を悩ますことですね。 ichi
前立腺全摘の問題点である尿漏れの件は骨盤底骨体操が良さそうなので入院前から始めています。開腹しないので傷の治りは早いということでゴルフもOKとの判断かも知れません。もちろん、その時、尿漏れパッドは使用しますが、いろいろ試してみたいと思います。少なくとも再発時の対応の選択肢が広がる(全摘は次に放射線治療ができる、放射線治療では次は全摘も放射線治療もできない)という観点で全摘は有効かもしれませんね。
全摘で再発しても次に放射線治療ができるが、放射線治療では次がない
これが、全摘を選ぶ1番の理由になっているかもしれませんね。
全摘でPSA再発が起きた場合、そのPSAの推移から取り残しだろうと推定される場合は、救済外照射が検討されます。照射は1日1回で2ヶ月間以上の日程が必要で、前立腺床に65~70Gyの照射をします。これによって根治できれば万々歳です。
放射線外照射でPSA再発が起きた場合は、次がないとされます。
これは前立腺付近に副作用が許容できる限界近くまでの線量を照射するため、もし再度同じ場所に放射線を再度照射すると、非常に重大な副作用が起きてしまうから実施は不可能とされます。放射線治療では、初回治療で根治させる以外ありません。
しかしながら、放射線外照射治療の再発後に再生検を行い、局所の再発だと特定されれば、病巣に対して救済小線源治療を行うという病院もあります、ただし難しい治療であるため症例数も少なく、ごく一部の医師しか行えません。
また、私が告知を受けた病院の担当医によれば、放射線治療でPSA再発が起きた場合でも、難しい手術ではあるが摘出はできると聞いています。しかしこの手術で病巣が取り切れるとは限らないのが難点です。
さらにPSA再発で、そのPSAの上昇率が高く、骨転移の可能性ありと診断されることもあります。この場合には、手術でも放射線でも、根治を目指す救済治療は困難であるためホルモン治療が行われます。