小線源単独│長崎大学病院 長崎 K・A

前立腺がん治療を経験された方の体験談 長崎 K・A さん

がんが見つかったきっかけは?

2016年の正月、腎臓の辺りがチクチクするのを感じた。取り立てて痛いというほどではなかったが、そんなことが2,3回続いたので少し気になり、近くの泌尿器科を訪ねた。

触診やエコー検査の結果、腎臓や膀胱には特に異常は見られないということだったので一安心したが、その時、あることを思いだした。
それは遡ること5年前、60歳の退職前に診てもらった、最初で最後の人間ドックで『PSAの数値が高いので専門医で診てもらうよう』という紹介状が送られてきていたこと。

当時はどうせ医療機関のカネ儲けだろ、くらいにしか思わなかったのでその紹介状なんてどこにやったかもわからなくなっていたが、医師にそんな事情を話すと、触診で「前立腺が少し肥大している」と言われ、血液検査をしてもらう事になった。

1週間後、検査の結果を訊きに行くと「PSA値が9.5ありました。これは擬陽性なので専門病院での検査をお勧めします。」と言われた。確実ではないが目安として0~4までなら陰性、5~9は擬陽性、10以上は陽性とのこと。

つまり、限りなくクロに近い結果だったのだが自分としては生活には全く支障がない体調(排尿や射精)だったので「このまま様子を見る、というのでは駄目でしょうか」と尋ねると「それなら検査した意味がないでしょう。どこの病院にでも紹介状を書きますから」と諌められた。
更に、「どこの病院でもいいですが、万一、治療となった場合、大学病院が治療の選択肢が一番ありますから大学病院が良いと思います」と重ねて勧められたので長崎大学病院での検査を決めた。

のちに受けることにした小線源治療だが、これを行なえるのは長崎では長崎大学病院だけだったので、精密検査をここにし、余計な手間が掛からなかったのはこの医師のアドバイスのお蔭である。尚、腎臓辺りの痛みの方はその後、まったく出ない。

2016年1月の終わりに大学病院で生検(生体検査)の手続きをし、2月9日に1泊2日の検査入院を行なった。
結果、グリソンスコア 3+4=7の『立派な前立腺ガン』と認定された。
蛇足だが、その生検の痛かったこと!! 局所麻酔が効いてなかったようで、8か所を肛門から採取されたが、生まれて初めて経験する痛みで「二度と御免だ」と思った。

 PSA:9.5
 グリソンスコア:3+4=7
 陽性率: %(生検 本中陽性 8本)
 T分類:
 診断時年齢:64 歳
 触 診: 異常はありましたか?なし

あなたは、どの治療を選びましたか?

その後、CT・MRI・骨シンチ検査で転移は確認されないことを知らせてもらい診察医師から希望する治療法を訊かれた。その頃にはネットや書物で前立腺ガンの情報を調べ回っていたので迷わず「出来るなら小線源治療でお願いします」と答えた。

第一に男性機能保持率が高いこと

全摘の場合、神経温存を試みてもあまり期待できないようで不安が大きかった。術後生存率が全摘も小線源もほとんど変わりない現状なら男性機能を保持できるほうを選びたい。もっとも使う機会があるかは別問題だが・・・。

第二にQOLが高いこと

小線源治療の場合は前立腺はそのままだから排尿信号も術前と同じ様にあるが、全摘の場合、それがなくなるのでオシメは必須になる。(※1) 時間が経てば回復する可能性もあるというが不確実である。オシメを手放せない生活は意識があるうちはちょっときついと思った。

あと、入院期間が短いこと

全摘の場合は2週間ほどだが小線源では3泊4日で退院できる。以前、足の怪我で他の病院ではあるが入院した際、病院食の不味さに閉口した経験から入院期間が短いのは魅力である。

外照射に関しては約2カ月ほぼ毎日通院しなければならない。これは意外に苦痛であろう。また照射技術の差が大きいということで選択肢からは外れた。

更に、これは素人考えなので他人には言えないが、どんなに小さな傷(ダヴィンチ手術)でも身体にメスを入れることでその部位は出血する。その血液を介してほかの臓器等にガンが転移する可能性がないとは言えない、と考えるに至ったからでもあるが、医学的根拠はまったくない。

小線源治療を選択

 医師は私の選択には快諾してくれたが小線源治療は希望患者が多いので半年ほど先になる、と言った。
半年ほど先・・・5年も放っておいて今更、という感じではあるが、そんなに時間をおいてもいいのか尋ねると「この状態の前立腺ガンは進行が遅いので大丈夫」ということだったので待つことを決めた。それが3月8日だった。
2日後に前立腺が少し肥大しているので小線源治療をするために縮小させる必要がある、とホルモン注射を左腹部に受けた。半年ほど効果があるという話だった。
その3カ月後の6月9日のPSA値は3.73。これはホルモン注射による数値低下と思われる。

8月になって大学病院から9月に小線源治療を行える旨の連絡が来た。
8月10日に事前検査を受け『施術可能』ということで入院手続き等の説明を受けた。手術は9月5日の月曜日と決まったが土、日は病院側が入院手続き出来ないので金曜日の午後からの入院となった。なんだか2日損した気分だった。

2016年9月5日 小線源治療

 9月5日、朝からの手術は全身麻酔だったので手術室に入った後の記憶はまったくない。
生検の時の、あの痛みとの再会を恐れていたが杞憂に済んだ。
手術後、病室に運ばれる時に目を覚ますと心配そうな妻の顔があったので「木村拓哉です」と言ったら変な顔をされた。後で聞いたら「頭がおかしくなったのかと思った」と言われ、ボケもT・P・Oを考えないといけないなぁ、と反省した。
その日はカテーテルを入れられたまま、まったく身動きも出来ない状態でほとんど眠れぬ夜を過ごしたが、その後の経過は順調で2日後の水曜日には無事に退院することができた。
5泊6日の入院生活、食事はそれほど悪くは無かった。

治療後の経過、感想など自由にお書きください

2016年9月5日 小線源治療
<< PSA推移 >>
2016年12月13日  PSA値は4.32
2017年2月7日   PSA値は3.53
2017年5月9日   PSA値は3.99
2017年8月8日   PSA値は3.56
2017年10月24日  PSA値は3.92
2017年12月5日  PSA値は3.40
2018年3月6日   PSA値は1.98
と、多少の上下はあるものの、ここまでは順調に数値を下げていたのだが・・・。

2018年6月5日   PSA値は3.18
2018年9月4日   PSA値は4.19
2018年10月9日  PSA値は4.41
・・・これを診て担当医は『再発』の可能性を口にした。
少しショックだったが自分で選んだ治療法だったし、自分の親が亡くなった歳をはるかに越しているので『仕方ないか。まぁ、今日明日死ぬわけじゃないし。ホルモン療法になるのかな』という感じだったが・・・。

2018年11月6日   PSA値は2.44
担当医が首をかしげている。あまり見られる例ではないようだが悪くなるよりはいい。

2018年12月4日   PSA値は2.39
この結果に「たぶん再発はないと思います」と担当医が言った。

2019年2月5日   PSA値は1.57
これが今現在の状態である。

排尿に関しては術後から頻尿に悩まされた。
日中は1、2時間置き、夜間は3、4回尿意で起こされた。それも『出る』ではなく『タラタラ流れ落ちる』ような感じ。

投薬はザルティア・ユリーフ・セルニルトン。施術から1年以上経った10月、放射線の効力もほぼなくなってきたころなので薬も減らして良いかと思い、ザルティアとユリーフを止めてもらったら大間違い。一か月くらいして痛みが出だし、初診してもらった時の開業医に駆け込み、投薬してもらった。

しかし、その後は時間の経過とともに頻尿は徐々に治まり18か月した頃、ザルティアを止め、24か月の頃にはユリーフを止めた。今年の2月からセルニルトンも止めているが、施術前の状態と比較すると若干回数は多いが以前に戻ってきている。

差し支えなければ、男性機能はどうなりましたか?

男性機能については、施術の前後で2年半が経過していることを考慮したら問題は感じない。実感としてさほど変わらないように思える。ただ、生検の後はもろに血のような精液が出たが、これは製造工場を直撃したのだから当然のことだったろう。

施術後も射精感はあるが、一時、ほとんど精液が出なくなった。逆行性射精のような症状だったが、それも2年目ころからはそれなりに回復してきた。これはユリーフ錠を止めた影響があるのかもしれない。

治療から約2年半。次回の検査は4月16日

どんな数値になるのか、不安と期待が交錯している。このまま、快方に向かってくれるといいのだが・・・。

長崎 K・A

小線源治療 長崎大学病院 泌尿器科

小線源治療のよい点は体力への負担が少ない点です。3泊4日の入院治療です。小線源治療の欠点は術後の頻尿、排尿困難が出現する可能性があることと、数年後に血尿・血便といった晩期障害が起こること、小線源治療後は手術による前立腺摘出が難しくなる点です。
長崎大学では小線源治療は低~中間リスク群の患者さんに対して行っており、病状に応じて体外からの放射線治療を併用しています。
 
 →前立腺がん|泌尿器の病気について|患者さんへ|長崎大学病院 泌尿器科・腎移植外科


長崎 K・Aさん、投稿ありがとうございます。
詳細な内容で、治療までの経過がよくわかりました。
 
 
※1 全摘の場合、前立腺がなくなるのでオシメは必須
こう書かれていましたが、手術を考えている方にはダメージの大きな内容なので補足します。手術後にオシメ(一般的にはオムツ)は必須、ま、これはその通りです。術後尿道カテーテルを抜いたあとしばらくは「尿が貯まるという感覚がない」のだそうです。それでも、早い方は退院時に排尿が我慢できるようになり、1ヶ月以上尿もれが続いた方も、6ヶ月くらいで止まったという報告もありますから、多数の方はオムツはいらなくなるようです。しかし一部の方は1年経過しても尿もれが止まらないと聞きます。病院側の出す情報では、尿もれパッド1枚で済む程度は「尿もれしない」扱いになるようですから、どれくらいの方が尿もれパッドなしで生活できるのかわかりませんが、オムツ必須の方は少数です。しかし少数であっても、ご本人にとっては非常に大きな悩みとなる。不確定要素が大きい治療法であるというのはその通りだと思います。 
参考→尿道括約筋
 
>5年前「PSAの数値が高いので紹介状が送られてきていた」
この時すでにPSAは4を超えていたようですね、そしてその5年後は9.5ですから、比較的穏やかなPSA上昇カーブのようです。
 
もし5年前に生検を受けていれば、その時に癌が見つかったかもしれませんから、癌を5年放置した可能性もあるわけです。しかし、それでも「PSA1桁、グリソンスコア7」で癌が見つかっていますから、比較的早い段階で見つかったほうであり、時間の経過が根治性に影響を与えていない、と考えて良いと思います。このような実例から、前立腺癌の進行は一般に穏やかであると言われるのでしょう。
 
「じじ..じぇんじぇんがん」では、私がPSA上昇の早い高悪性度の癌であったため、告知後すみやかに治療法を決め、治療を開始しました。これを読んだ方は治療を急ぐ必要があると感じるかもしれませんが、現実はそうとは限りません。多くの方は穏やかなPSA上昇を示す悪性度の低い癌です。
 
癌を告知された時、自分の癌は、穏やかな進行なのか、早い進行が予想されるのか、それを知ることで、半年や1年後の治療でも問題ないのか、それほど悠長にかまえていては危険なのかがわかりますね。

>朝からの手術は全身麻酔
小線源であっても、病院によっては全身麻酔なんですね、
もっとも生検を全身麻酔で受けた方もいらっしゃいますから、病院によっていろいろです。
 
>2019年2月5日   PSA値は1.57
PSAがなかなか下がらず、不安もあったようですが、あきらかな低下がありましたから、PSAの一時的な上昇はPSAバウンスにまず間違いないでしょう。
 
>ザルティア
ザルティアが処方されていますね、これは泌尿器科で前立腺肥大に関わる排尿障害に対して処方されるもので、成分はタダラフィル、つまりED治療薬シアリスと同じです。放射線治療によって、どうしても男性機能は低下しますから、そのリハビリの意味でもザルティアの処方は望ましいと思うのですが、なかなかしていただけません。

ichi

重粒子線治療か、小線源か? 東京 Y

前立腺がん治療を経験された方の体験談 東京 Y さん

がんが見つかって、どんな治療を勧められましたか?

私は、元々血液検査で肝臓などの数値が悪化傾向であるため、消化器内科に通っていました。2018年の2月、肺や消化器系のCT、MRI検査を受けるついでに、念のためPSA検査をしたところ5程度と高かったため、泌尿器科でMRI検査を勧めらました。

MRIの結果は、癌の疑いが見られるとされ、PSAも7程度と上昇していることから3月に生検を受けました。5年以上前にPSA検査をしたときは1以下であったため、油断してそれ以来検査していませんでした。ちょっと後悔しています。
生検の結果は、やはり前立腺がんでした。このあと骨シンチなどで転移を調べます。

主治医の先生は手術を勧めてきました。事前に勉強していたとおり、手術なら再発時に放射線などの選択肢があるが、といった説明でした。知らない人はそれで納得してしまうのだろうなと思いました。(悪い先生ではなく、こちらから質問すれば正直に答えてくださいましたが…)これから、まずは転移がないという前提で、どの病院で診ていただくか検討したいと思っています。低リスクでしたら東京の病院でもよいかなと思っていましたが、生検の結果を受け、気持ちとしては滋賀医大に大きく傾いています。

 PSA:7
 グリソンスコア:3+4=7
 陽性率: %(生検 本中陽性 本)
 T分類:T2c
 診断時年齢: 54歳
 触 診: 異常はありましたか?

あなたは、どの治療を選びましたか?

まだ、治療前です。

小線源治療を受けたいと思っていますが、最初から小線源だけに絞ってしまうのもどうかと思い、自分を納得させるためにも、一度重粒子線の話を聞いてみたいという気持ちもあります。重粒子線は、それが当たったところへの効果は高いのでしょうが、ビームが絞られている分、正確に患部全体に当てるのは難しいのではと思っています。その辺りをどう考えているのか確認したいという気持ちです。
実際に、重粒子線についてセカンドオピニオンを聞いてきました。簡単にまとめましたので、ご参考までにお送りします。

重粒子線は、X線よりもエネルギーを患部に集中させやすく、その細いビームを縦、横、深さ方向に走査して患部を塗りつぶすように照射します。結論からお話しますと、やはり照射位置の精度が特別に高いわけではないようで、またIMRTなどと比べて治療成績が格段に優れているわけでもなさそうでした。メリットとしては、IMRTより照射回数が少なくてよいという点と、直腸などの副作用が少ないという点と理解しました。それでも治療を希望される方は多いそうで、現在は初診が3ヶ月待ちだそうです。

◎実績、PSA非再発率は?
PSA非再発率は、中リスクの場合、5年で90数%、10年で8割程度、高リスクも大きくは変わらない。

◎副作用の発生率は?
他の方式と比べて膀胱は大きな差はない。直腸は若干良い。

◎ホルモン療法は前後それぞれどの程度の期間?
中リスクでは6ヶ月。4ヵ月後から重粒子線治療開始。
高リスクでは2年(たぶん中リスクと同様に4ヵ月後から重粒子線治療開始と思われる)
ホルモン療法については、前立腺を縮小させる効果が見込めることと、過去のX線治療でホルモン療法併用が有効とのエビデンスがあるため適用している。

◎位置合わせの方法は?
予め決められた位置に体を強く固定した後、レントゲン撮影を行い位置を確認する。位置がずれていた場合は、体を動かして調整する。照射装置側での調整は無し。事前に計算した位置に前立腺がある前提で照射を行う。

◎照射方向は?
周囲の骨との位置関係を考慮し左右の水平方向から照射する。1日毎に右、左、交互に照射を行う。

◎照射範囲はどのくらいのマージンを取っている?
外側に数ミリのマージンを取っている。浸潤の状況で若干の調整はある。

※ まだ最終的な治療方針は確定しておりませんが、中リスクなので、小線源単独か、外照射併用のどちらかになりそ
うです。


東京 Y

インタビューへの回答 ありがとうございます
あとで私のコメントをここに記入させていただきます。

小線源治療│静岡がんセンター 62歳Y.S

前立腺がん治療を経験された方の体験談 沼津Y.S. さん

がんが見つかったきっかけは何でしょう

父が前立腺がんでなくなったのと兄が前立腺がんで摘出手術をしたこと、それと術前の3年ほど前からPSAが5~6位の値だったので生検をしたところガン細胞が見つかりました。

PSA: 5.50
グリソンスコア:7(4+3)
年 齢:62歳
リスク分類: 中間リスク

どんな治療を勧められましたか?

全摘手術を勧められましたが、知り合いのアドバイスからIMRTを勧められました。検査した病院ではその設備がないので設備のある病院を紹介されました。
行ってみるとそこには設備はあるが、IMRTをするには位置決め等で時間がかかり患者さんをこなせなく当時の医療スタッフ体制ではできないと言われました。
そこでいろいろご意見を聞き小線源治療を受けることに決めました。
本当はグリソンスコア4+3の場合は小線源治療はできないと言われたのですが私のたっての希望と、担当の泌尿器科の先生それと放射線の先生との話し合いでしてもらえるようになりました。
小線源治療をして頂けるということでとても嬉しかったです

あなたが選んだ治療法は?

小線源治療はシードを65本ほど埋入しました。
駿東郡長泉町の静岡がんセンターで行いました。

その治療法に決めた一番の理由は何でしょう

私の友人(彼も前立腺がんでIMRTの治療を受けた)のアドバイスです。
3ヶ月に一度定期検査をしていますがPSAは上下を繰り返し現在3弱です。

PSAの推移

numazu-ys_psa

あなたからみなさんに伝えたいことがありますか。
差し支えなければ治療後の男性機能についても教えてください。

治療後の排尿障害とか無かったのですが、排尿治療薬か何かが原因でアレルギーに悩まされました。
幸い男性機能は失われていません。
PSAがなかなか下がらないのが気にはなりますが、担当の先生を信じています。
この治療を選択して良かったと思っています。

沼津Y.S.


インタビューへの回答 ありがとうございます。
お父さんだけでなくお兄さんも前立腺がんとなると、いつか自分もという不安がずっとあったに違いありません、大変でしたね。
PSAの推移をお送りいただきありがとうございます。放射線治療の場合はPSAバウンスもあり、すんなり下がるわけではないと聞きますが、まだしばらくは様子見ということでしょうか。治療後の排尿障害がなかったようですが、みなさんそれぞれなんですね。
男性機能についても書いていただきありがとうございます。「失われていない」と聞き同じ治療の私も元気がでます。