前立腺がん治療を経験された方の体験談 K.Yさん71歳
がんが見つかったきっかけは?、また、どんな治療を勧められましたか?
毎年、市の健康診断でPSAを測っていました。ずっと3くらいの値でしたが、昨年の健康診断でPSAが3.5になったため獨協医大を受診しました。獨協でPSAを測ったところPSAは4になっていおり、触診では肥大はあるものの、硬さは問題ないとされましたが、自分から生検を受けることを希望し検査入院をしました。その結果「前立腺がん」と診断されました。
担当医からは、放射線の新しい機械が入るから放射線外照射もできる。または、ロボットも良いという話でした。
それを聞いて、あなたはどう思いましたか?
ネットで調べたところ、摘出手術では成績が良くないと知っていました。担当医は初診の時とは別の医師でしたが、重粒子線を希望していると伝えると、再度、この病院にはロボットもあるし放射線治療システムもある、福島の陽子線治療ではどうですか?と勧められました。
PSA:4
グリソンスコア:
陽性率:15%(生検 20本中 陽性3本)
癌の部位:両葉(右2、左1?)
T分類:
診断時年齢:71歳
触 診: 異常はありましたか? ない
治療法に悩みましたか、実際にどんな治療を受けましたか?
治療法には悩んでいません。ネットで検索し放医研の重粒子線しかないと思しました。自分の決断に自信があったためセカンドオピニオンは受けることは考えませんでした。
担当医からは「お金かかる、保険には入っていますか?」とも聞かれましたが、私は「お金に糸目をつけない」と伝えたところ、渋々という感じで放医研への紹介状を書いてくれました。
放医研で重粒子線治療
獨協ではステージ1と言われましたが、放医研ではステージ2という診断でした。
治療前の5ヶ月くらい前からホルモン治療を受けましたが、前立腺肥大の縮小のためという説明を受けています。ホルモン治療は重粒子線治療と同時に打ち切りになりました。ホルモン治療の影響はまったく感じたことはありません。
放医研でに入院したのは2016年1月です。
重粒子線治療に先立って体の下に入れるための型を作りました。重粒子線治療は15分くらいですが、実際の照射時間は1分強くらいだと思います、ごーっという音がしますが、痛くも痒くもありません。照射時は専用の下着でした。照射は1週間あたり4回、合計12回のため3週間かかりました。重粒子線治療の8,9回目あたりから頻尿の症状が出てました。入院中はお酒は禁止、コーヒーもだめです。昔は16回の照射であったそうです。
治療後の経過、感想など自由にお書きください
世界の最先端の治療法は重粒子線であると思ったので、放医研に決めました。重粒子線は兵庫にもあるが技師がいないらしい。大分にもあるけどね・・
治療を決めたのは以下のような理由です
●手術だと尿漏れなどの合併症が出るので放射線治療を選んだ。
●放医研は99.9%治ると言う。
●10年で再発がいない、という??
治療後の経過は、特に気になることはありません、ただし5月まで頻尿が続きました。
栃木K.Y 71歳
インタビューへの回答 ありがとうございます.
この回答は、実際に話していただいたものを、こちらでまとめたものです。
※ 文中に「放医研は99.9%治る」、「10年で再発がいない」とありますが、実際にそのようなデータは開示されていませんから、担当医あるいは関係者の期待を込めた発言の可能性が高いと思われます。
重粒子線は理論的には非常に優れている
重粒子線は、最先端の技術であることは確かです。また、従来の放射線治療は体表面では強く作用し、深いところでは弱まるのに対して、陽子線は深いところにエネルギーのピーク(ブラッグピーク)を作ることができるため、理論的には非常に優れていると感じます。ただし照射方向を自在に変えるのは重粒子線の場合難しいようで、この時点では2方向からの照射だったようです。これに対してIMRTではガントリーの回転照射を可能としていますから、放射腺の形状の制御ではIMRT(VMAT)が1歩先にあるように思います。このため重粒子線が高精度に制御され前立腺癌だけに確実に照射できるかどうかという点において、その精度は通常のIMRTを超えるものとは思えません。
システムが高精度であったとしても、照射精度はそれ以外の要素で決まる?
というのは、粒子線や放射線の治療システムは、仮に1ミリ単位で非常に精度良く照射が可能だとしても、前立腺があるのはやわらかい人体の中であり、日によって前立腺の位置が数ミリ変わる、あるいは周辺臓器の影響で前立腺自体が少し変形することもあります。システム自体は高精度でも、この動きや変形に対して照射中に自動で追従することまではしていないため、照射精度は人の体の臓器の位置や形状の変化がどれくらいかによって決まってしまうと思われます。(前立腺は時間の経過と共に少しずつ動くため、同じ位置であることが期待できるのは2分程度とも聞きます。)
おもに直腸に対する必要のない照射の副作用が問題
これは照射直前の位置合わせをいくら高精度に行ったとしても、解決できる問題ではないため、現実的には照射範囲を数ミリ以上大きくするなどして照射範囲がけっして前立腺をはずれないようにしています。また皮膜外浸潤(その多くは前立腺の外側の数ミリ程度)に対応することも考えると、前立腺より数ミリ大きい範囲を照射する必要がありますから、この数ミリ以上のマージン領域が周辺臓器、特に直腸に対する必要のない照射となり、それによって起きる副作用を許容できる限界が、照射線量の限界となってしまいます。
放射線治療(重粒子線を含む)は一般に照射線量が高いほど根治性が高くなりますから、できるだけ高い線量を照射すべきですが、放射線治療における照射線量は「根治に必要な線量はどれくらいか?」で決まるのではなく、副作用を許容できる限界の線量で決まってしまう、という点が、放射線及び粒子線などの外照射に共通する点ですから、粒子線が放射線より格段に良い成績を出せるか、というとそれは難しいだろうと思われます。