トリモダリティ療法の体験談 埼玉 H.U.さん
お住まいの地域:埼玉県
治療を受けるまでの経緯は?
元々40歳の時からPSAをチェックしていました。最初は0.6。
53才の時は1.5だったのが54才の時の検診に急に4.4に上がっていました。
そのため泌尿器科で精密検査となりましたが、MRIでは右に影が見つかり、しかもはみ出しあり。生検では12(+右2)本中 右の6+2本に腫瘍が確認されました。(一部は14mmとかなり大きいものです。)
しかも生検の時、担当医がPSAの値に比べて進行度合いが多き過ぎることから神経内分泌癌を疑ったようで、血液検査が追加されたというおまけ付きです。
ichiさんに連絡したのはこのときで、結果が出るまでの間恐怖が先行していたため、とにかく詳しい方からの神経内分泌癌の情報がほしかったためです。
数週間後、神経内分泌癌ではないことがわかり晴れ晴れしい気持ちになりました。
早速ichiさんに連絡をして”よかったです。普通の腺癌でした!”と伝えたところ”ガンで喜ぶ人は聞いたことがないよ”と大笑いされたことを覚えています。
最終的に治療は紆余曲折を経て滋賀医大の岡本医師によるトリモダリティ(小線源と外照射併用およびホルモン剤)を受けることができました。
治療前PSA:4.4
グリソンスコア:8(4+4)
陽性率:60%(生検12+2本中 陽性 6+2本: 「+2」 というのは、MRIで右側に腫瘍があることがわかっていたので、右側のサンプリングが2本追加されており、その分です。)
T分類:T3aN0M0(ただしその後他の医療機関での見立てではT3bN0M0です)
診断時年齢:54歳
触診の結果は?:硬節あり
治療年: 2019年下半期
治療後にどう感じましたか
治療予定の方は現在の気持ち
先に”普通の腺癌”と書きましたが、実は先生からは特殊なタイプであると伝えられています。
もともとPSAをあまり出さない上に、どうやら普通のタイプより転移しやすいものらしいのです。
そんなわけで気が気でない生活が続いていますが、その一方で数か月にわたる紆余曲折の末に岡本医師の治療にたどり着いているのでやり切った気持ちも強くあります。
現在の経過、伝えたいことなど
差し支えなければ、男性機能はどうなりましたか?、教えてください。
経過観察が始まったばかりなため状況は何とも言えませんが、頻尿等の後遺症とうまく付き合えるようになってきた感じです。
男性機能は少し残っている感じです。
新たにガンと診断された方はショックが大きいでしょうが、担当医師からの治療方針は鵜呑みにせずに最低でも1,2日時間をもらって自分には何が適しているか判断することをお勧めします。
実際自分は地元クリニックの担当医からはダビンチでの手術を強く勧められましたが他病院でのHDRを選び、そのHDRを受ける予定だった病院の担当医師からは”あなたのは手術したら再発するよ。クリニックの先生は手術したかっただけじゃない?” と言われています。
患者さんへの質問:
もし、時を遡れたとしたら、同じ治療を選びますか?
私は 「はい、この治療を選びます」と答えた。
埼玉 H.U.
埼玉 H.U.さん、インタビューへの回答ありがとうこざいました。
普通、健康な方のPSAは2以下だとされています。集団検診などでのPSA基準値はその2倍の4ですから、この方のPSA値4.4は、そうたいしたことがないと思うのが普通です。
実際、その通りで、PSA値4.4では、担当医は生検を勧めないかもしれないし、たとえ癌であったとしても、初期であることがほとんどなのです。
そんな値であるのに、どうして「普通のタイプより転移しやすい腫瘍」、つまり高悪性度の癌が見つかってしまうのか、ということに驚かれたかもしれません。
この方はお父さんが前立腺がんに罹患されていたことから、早くからPSAの推移を気にされていました。
比較的低い値でPSAが推移した後、急に1.5から4.4に上昇しました。その期間はわずか16ヶ月であったとのこと。しかもこのときの年齢は54歳と若いのにである。これを危険な兆候と感じて即座に行動されたあなたの判断は正しい。
実は、前立腺がんと診断された患者さんのうち、PSAが1年で2倍以上となる方はそう多くはないのです。もしあなたが同じ傾向なら、これは重大な何かが起きていると考えるべきです。
しかし仮に1年でPSAが5から6に上昇したとしても、そう心配しなくても大丈夫。癌が見つかるかどうかのレベルであり、癌であったとしても、そう悪性度は高くないと推定できる。注意すべきはPSAの絶対値ではなく、直前のPSAの上昇率です。それが急であるほど要注意なのです。
それでは1年でPSAが5から20に上昇したとしたら、それをどう考えたら良いのでしょう。
「高悪性度の癌」が隠れているかもしれないと不安になると思いますが、これほどまでに高い上昇をする方は、かなり例外的な患者さんで、めったにいません。(およそ、がんと診断された患者さん1000人中、数人いるかどうか、というレベルかもしれない)
これほど急に極端な上昇した場合は、癌という確率より「前立腺の炎症」による一時的な上昇である可能性が高いため、前立腺の炎症を抑える薬をしばらく服用してから再度PSAを測ることで、その切り分けができます。
1回のPSA値では、多くの場合情報不足です。複数回の定期的なPSAを観察することで、前立腺がんのリスクを推定することができます。