検査:前立腺針生検、MRI画像診断

PSAが10ヶ月で2倍に上昇!?

PSAは3年前は1にも満たない0.7でした。それが・・
その2年後には1.6に上昇、それから僅か10ヶ月でその2倍の3.2(ng/ml)になり、要精検の通知が来ました。PSAの数値自体は低いのですが、グラフ化してみると、上昇の度合いが加速しておりこのままの上昇カーブなら来年には計算上10を超えそうな勢いに思えた。(注:※1)


このグラフは、治療前のPSA推移。0.7、1.6、3.2は集団検診によるもの、2.978、3.300は病院での検査によるものだが、約1月以内に測っているのに10%も変化している。これをどう見るかだが、検査結果にはこれくらいの「ばらつきが出る」ということかもしれない。

前立腺がんの腫瘍マーカーとしてPSAという項目があるのは知っていましたが、これまで、その数値自体まったく意識していませんから、上がっていることにも気づきませんでした。要検査の通知が来て初めてPSA3.2とは何だろう、そもそも前立腺の働きや、それがどこにあるかも知りませんでした。

医師に勧められるままMRI検査を受けた

調べてみると、前立腺は膀胱の出口側にあり尿道の始まる部分をぐるりと取り囲んでいて、尿道はそのまま陰茎につながっている。

その時のMRI画像です、これはヘソよりずっと下の胴体の水平断面で画面下側がお尻です。前立腺があるのは体の中心部で、その下に密着している少し小さい丸が直腸、画像では白く写っているのが膀胱で前立腺の上部に位置しています。この時のMRI画像で「左葉に影がある」とされ生検に進みましたが、この画像ではそれがわかりません。前立腺はこのように直腸と隣り合っているので、肛門から指で触診することができるわけです。

※ 改めて、前立腺の位置を確認してみましょう。
Google画像検索:前立腺|膀胱|直腸

前立腺 針生検のため2泊3日検査入院

生検は2泊3日の入院でした。検査日の前日に入院してパジャマに着替えると気分はすっかり病人です。初診でがんセンターを訪れた時は、癌患者ばかりの病院というだけでも緊張しましたが、この頃には雰囲気にも慣れ4人部屋でのんびりしていました。

検査当日は、検査を受ける方が何人かいて、看護師から「浣腸で腸がきれいになった順に生検と受けていただく」と言われました。え、浣腸・・若い看護師さんに浣腸されるのは恥ずかしいなぁとつぶやいたら、私はそれほど若くないので良いですか~とかわされてしまい、「・・よ、よろしくお願いします」と言わざるをえませんでした。病院で余計なことは言わないほうが良いらしい。・・無事、浣腸で腸がきれいになったのを確認していただき、病室を出て車椅子に乗せられ生検に向かいました。

- 手術室 - 経直腸生検

車椅子で検査に向かうなんで大げさだなと思っていたら、着いたところはなんと手術室でした。針生検なのに手術室とは驚きですが、生検も手術の一部ということなんでしょう。手術室に入るのは生まれて初めての体験です、テレビでよく見るような冷たい感じのする大きな空間で上には多数のライトがありました。幅の狭い治療用と思える硬い寝台に横向きに寝かされ、医師におしりを突き出すような格好で検査が始まりました。

経直腸前立腺超音波プローブ

検査は経直腸、つまり生検に使う機器が肛門から挿入され隣り合う前立腺に針を挿してサンプルを採取します。こう聞くと実に恐ろしいのですが、挿入される機器には表面麻酔効果のあるゼリー状のものが塗られているため、それ自体はそう痛くはありません。大腸内視鏡検査と同じで体の力を抜いて医師に体を委ねればたいしたことではないですね。検査が始まると時々、組織サンプルが採取されるパチンという音がして、チクリとします。この刺激が不快です、これを繰り返されるのでだんだん辛くなってきますが我慢できないほどではありませんでした、比較するとしたら歯医者のほうが辛いかもしれない。

私は寝台の上で検査が終わるまで寝ているだけなので暇、手術室は空調の音が聞こえるだけで静かです。 そこで検査をされている医師に「MRIで影があるのに癌がないということはあるのですか?」と聞いてみたところ、それには直接答えず、採取されたサンプルを見てみますかと言われ、生検途中にもかかわらず、糸状のものを見せてもらいました。うまく質問をかわされてしまいましたが・・「まあ、みつかるのだろうな」とこの時思いました。

生検は続き、やっと最後のパチンを聞いて16本の組織サンプル採取が終わりました。室温は適度で、薄いブランケットがかけられているためほんわりと温かいのですが、なんとも言えないパチンという衝撃を感じるためか、冷や汗をかきました。術後再び車椅子で病室に戻されました。
麻酔は打たれていないので普通に歩けます。トイレに行くと血の混じった尿がでました。事前の説明通りなのですが、最初の尿などは血の塊が混じって出にくいほどでした。その後何度か排尿していると、しだいに血の色が薄くなりました。尿道を囲む前立腺に何度も針を刺すのですから、血が出るのも当然ですね。

初診の時も、先生が肛門に指を入れる触診を受け、今回の生検でも、横に寝かされお尻を出して肛門から検査器具を入れられたりと、この病気ではパンツを脱いだりお尻をだしたりが普通なのです。

前立腺 針生検の結果、16本中5本に癌

後日、この生検の結果から前立腺癌と診断されました。これはその生検で作られたプレパラートの一部です。紫色に染色された糸状のものが採取された組織で、病理医はこれを顕微鏡で観察して癌かどうか、悪性度はどれくらいかなどの診断をするわけです。私の場合、陽性とされた5本はすべて左葉のサンプルからでした。

前立腺生検 [がん診療連携拠点病院、Tがんセンター]
悪 性 度: グリソンスコア8
陽 性 率: 32%(5/16)
4+4(30%), 4+4(20%), 4+3(40%), 4+3(15%), 4+3(5%)
癌の部位: 左葉

生検によって作られた私のプレパラート


腫瘍部分には組織に沿うように青色のマーキングがされています。例えば左の#15では組織の長さ14mmのうち5.5mmが腫瘍(5.5/14mm)とされたため、癌の占拠率は約40%です。占拠率は悪性度に併記され4+3(40%)のようになります


これは、生検で採取された私の#16の組織サンプルの拡大写真です。こんな糸のように細いサンプルから病理が癌かどうかを見分けるわけですね、青のマーキングがある部分が病変で6mmあります、少し他と違っているのがわかるでしょうか(見やすくするため病変を中心に明るくしてあります)

前立腺生検の影響

前立腺生検では、直腸から針を挿して前立腺のサンプルを採取します。直後の血尿、血便は仕方ないにしても、看護師からの説明では最初の1回は精液にも血がまじると聞きました。後日試したところ、混じるどころではなく出るのは赤茶色の血に近いものでした。気持ちが悪いので何度か放出してして元の色にと思い、日を改め試しましたが赤茶色のままでした。その後しだいに色が薄くなりましたが、もとに戻るまで確か2ヶ月くらいかかりました。

生検はイヤですね、これ1回限りとしたい、そう思いました。生検でなかなか「がん」がみつからないという話も良く聞きますが、私の場合検査からがんが見つかるまで一直線でした。その点では幸運と言えるのかもしれない。


※1:今だからわかること 治療後約3年経過

文頭でPSAは3年前は0.7、2年後に1.6、その10ヶ月後には2倍の3.2になった、と書いています。私はこのPSAの急上昇に危険を感じました。しかし、これは「誰でもこのように急にPSAは上がるもの?」という大きな誤解を与えそうですが、そうではありません。
数値の低さは別として、通常、高悪性度であっても1年でPSAが2倍になるような高い上昇率となる方は少なく、1年経っても1.5倍にもならないのが普通です。中間リスク、高リスクの患者さん、あわてないでください。
先にも書きましたが – – 治療後3年を経過して、担当医から改めて説明されたことによれば、私の前立腺癌は高悪性度の中でも比較的進行の早い症例であり、治療例として紹介すると誤解を生みかねない非常に「悪い例」とのことです。

追記: 2018年-月

針生検を受ける前にMRIでの画像診断は必須

PSAや触診などで前立腺癌が疑われたとき、その確定には前立腺生検が必要ですが、体に針を挿して前立腺の組織サンプルを採取する検査のため簡単ではありません。私の受診した病院では、生検に先立ってMRIでの画像検査を勧められました。MRIで癌が必ず映るとは限りませんが、画像として捉えられる可能性がある以上MRI検査は必須だと思います。MRI画像で疑わしい点がなければ生検を急がないという選択もできるし、もし癌が確定した場合には、その生検前のMRI画像が治療に役立つためです。
 
しかしながら、生検前のMRIによる診断が保険適用にならない地域もあります。また、事前のMRI検査は不要と考える病院もあるのですが、担当医によれば生検後に撮影されたMRI画像では出血によって腫瘍が見えにくくなると聞きますから、MRI画像を後の治療に役立てることを考えれば、生検に先立ってMRIでの画像検査は強く勧められるべきだと思います。
針生検も医療機関よって技量の差があり、苦痛の度合や腫瘍の検出率にも差があると思われますから、実績の多い病院で受けたほうが無難です。また、生検で癌と確定した後に、治療法や治療を受ける病院を選ぶのも患者の権利として認められていますから、検査の段階では「そこで治療を受けなくてはならない」とまで考えなくても良いと思います。

前立腺 針生検

直腸に超音波探子を挿入し、前立腺の画像を映しながら、がんが疑われる場所やがんの好発部位などをねらって、自動生検装置(バイオプティガン)にて針を刺入し、6箇所以上の組織を採取します。採取した組織を顕微鏡で観察して、がんがあるかどうか、また、がんがあった場合には、その悪性度を確認します。針生検は直腸から針を刺入する方法と、会陰部(肛門と陰嚢の間の皮膚)から針を刺入する方法があります。
→確定診断のための検査 針生検|アストラゼネカ

前立腺のMRI画像診断

辺縁域の腺構造がわかりやすい症例【画像診断チャンネル】

https://www.youtube.com/watch?v=-bnXvH5fHGU

前立腺のMRI画像診断

前立腺肥大症のMRI画像診断、症状、検査、治療(BPH:benign prostatic hyperplasia/hypertrophy)【画像診断チャンネル】

https://www.youtube.com/watch?v=9ThBifOHgzk


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次は再び「がんが見つかりました」と言われた直後の、担当医からの話へ

トリモダリティ体験記

続きを読む>> 治療の選択肢、失うのは男性機能か、命か?と問われればそれは・・