以下は古い記事で現在掲載されていませんが、重要な内容を含むと思われるため、その原文をこちらで保存したアーカイブです。
タイトル:前立腺がん治療とED[アーカイブ]
著作:www.zakzak.co.jp
掲載日:2014年08月21日
50代になると前立腺がんの疑いを探るPSA検診を受けることが望ましいといわれる。そこで前立腺がん治療に伴い、EDが発症することを気に留めておきたい。手術と放射線治療では、どちらがEDになりやすいのか。慶應義塾大学病院・泌尿器科(ED外来)の菊地栄次講師に聞いた。
【陰茎もリハビリ】
勃起神経は前立腺の後ろ外側に2本、張り付くように走っている。前立腺がんの手術(全摘)では、勃起神経の温存術が行われる場合があるが、がんの場所や大きさによって「両側神経温存」「片側神経温存」「非神経温存」が選ばれる。
「術後、勃起機能は一気に低下して、その後少しずつ回復し2年で固定します。EDになる確率は、大まかに非神経温存で80-100%、片側神経温存で60-70%、両側神経温存で30-50%です。このうち、勃起神経が片側でも残っていれば、ED治療薬の服用で性交できる確率がそれぞれ2割程度アップします」
ただし、完全に勃起が元に戻るのではなく、元の硬さや持続力の半分回復する程度という。
また、ED治療薬を使う術後ED対策で、最近注目されているのは「陰茎リハビリテーション」という考え方だ。
「術後、勃起させて血流を促さないと、陰茎に酸素が行き届きません。基礎研究でも、ED治療薬を使って定期的に勃起させることで海綿体の線維(せんい)化を防ぐことが確認されています。専門医の間では、術後EDからの回復には陰茎リハビリも重要なプログラムの1つとして認識されています」
ペニスも早期離床、寝た切りにさせないことが大切というわけだ。
【EDの確率は同じ】
では、放射線治療のED率はどの程度か。体の外から放射線を照射する外照射と、前立腺内に放射性物質を埋め込む内照射(小線源療法)がある。
「よく患者さんに、手術、外照射、内照射の3つでどれが一番EDになりにくいか聞かれますが、結果的には外照射も内照射も2年後のED率は両側神経温存手術とほぼ同等(30-50%)です」
ただし、放射線治療の場合は勃起機能の低下がゆっくり時間をかけてゆるやかに落ちていくのが特徴になる。なぜ、放射線照射でEDになるのかハッキリ分かっていないが、放射線が直接動脈を障害することで起こると考えられている。
「前立腺がんは余命が長いのでQOL(生活の質)を考えた治療が大切です。早期発見できれば、機能温存を目指した治療が可能となり、EDになる確率が低くなります」 (水川信吾)