どのような治療法が自分に適するのか、癌と診断されてから誰もが悩むことです。
手術療法か、放射線療法かの大きな2つの選択肢がありますが、このどちらかの優位性を証明する十分なエビデンスは存在しません。結果「病院ごとに勧められる治療法が違う」ということが普通にあります。これは、”どちらを選んでも成績差はない”ということではなく「下手な手術より放射線、下手な放射線より手術」と言われる通り、結局は治療法と病院の両方が自分にとって最善かを見極めなくてはなりません。
さらに、低リスク癌においては監視療法の可能性を、転移のある方では薬物療法をどう使うかを考えることになります。
今回のセミナーは80人以上の方が集まり、赤倉功一朗先生のCRPC患者に対する治療法の話から始まりました。難しい内容なのですが聞いている方の表情は真剣そのものです。続いて3人の方の体験談です、自分が選択しなかった治療はどのようなものだったのかという話を、興味深く聞きました。
→「前立腺がんセミナー 患者・家族の集い 2015 東京」
お話いただいた治療の様子はリンク先の動画をご覧ください。私は治療法を決めるまでの経緯に注目しました。「希望した治療が受けられなかった」という話は良く聞きますが、今回の最初のお二人の場合も小線源治療を希望したのに、適用できないとされ他の治療を受けています。首都圏でもこんな状況なのですから地方の前立腺がん患者の選択肢はほとんどないのが現実です。特に小線源の場合は、「低リスクに適した治療法」として扱われている、ということを改めて実感しました。
全摘手術 横山さん
最初のプレゼンターは横山さん。担当医、セカンドオピニオンや親戚の意見が同じだったため「全摘」に決めたという話でした。全摘手術を受けた全摘手術の前後の詳しい経過を聞かせていただきました。手術の結果も良好とのこと。
動画 →体験を語る(全摘手術) 横山 正 さん
担当医の話
自分ではシードによる内照射が良いと考えたのだが、私の場合は外部からの照射も併用する必要があると言われた。しかし毎日、外照射に通うのは仕事の関係上無理だと思った。
従兄弟の話
放射線治療は照射する領域が海外に比べて狭く、外れる場合もある。外科手術で削除できるならそれを薦める。
セカンドオピニオン
シードによる内照射を薦められるかと思ったら、意外にも「あなたの場合は手術してすっきりしてしまいなさい」と言われ、これで覚悟を決めて手術に向かうことになった。
癌のひろがり:t2cN0M0
PSA:4.38
グリソンスコア: 4+3=7 右葉
リスク分類: 中間リスク
治療:全摘手術(ミニマム創)
ミニマム創ロボサージャン前立腺全摘除(T医科歯科大)
2015年、1月13日入院、2月2日退院、17日復帰
放射線療法 石原さん
一方、放射線治療の石原さんは、放射線療法では一番スタンダードな選択のIMRTによる外照射治療を受けました。しかし、この外照射は1回3Gyと高い線量を照射する「寡分割照射」と呼ばれている先進的なものです。
動画 →体験を語る(放射線療法「IMRT」) 石原 雅広 さん
検査の結果、癌と診断された
担当医からは「手術(全摘)したほうが良い」と言われた。しかしこの診断日までには、放射線療法、それも小線源治療を受けたいと心に決めていたが、この病院ではその治療が受けられないため転院を申し出た。
群馬では有名な病院に転院
小線源治療を希望したが、担当医からは中リスクには適用できないとされ、外部照射であれば十分に効果が得られる。という説明を受けた。また、内分泌療法後に外部照射をやれば必ず効果が出ると言われ、その時からすぐに内分泌療法を開始。結果、内分泌療法を併用した外照射(IMRT)療法を受けることになった。
癌のひろがり:t2cN0M0
PSA:4.42
グリソンスコア:3+4=7
リスク分類: 中間リスク
治療:内分泌療法併用外照射
IMRT:寡分割照射 3Gy 21回 63Gy、7方向
2015年、8/24 ~ 7週間(月、水、金)
内分泌療法 角田さん
強い印象を受けたのはCRPCで内分泌療法を受けている角さんの話でした。抗がん剤や内分泌薬を乗り継ぎながらのサバイバルで、現在は有効な薬の選択肢が狭まり緊張感のある病状です。
しかし、それにもかかわらず「PSA0.2なんで可愛いものです」と冗談を交えて、にこやかに、淡々とご自信の治療の話をしていただきました。
角田さんが前立腺癌と診断されたときのPSAは1336、どうしてそんな値になったのかと驚きますが、「人間ドックでPSA6という時がありました、ほんとはその時に生検をやっておけば良かったのですが、3年ぐらい放っておいたら、こういう事態になってしまいました」とのことですから、誰にでも起こりえることなのです。
人前でこのような病状を話すというのは辛いことだと思いますが、それを感じさせないような力を感じました。ありがとうございます。
動画 →体験を語る(薬物療法) 角田 祐一 さん
→ 角さんのBLOG – Final Stage –
希望した治療が受けられない
病院が違うと別の治療法を提案されるかもしれませんから、その選択は重要です。他の選択肢を知らぬまま治療を受け、もし自分の期待通りの結果にならなかったら後悔するにきまっています。
私が癌と告知された時は、早く治療を始めたい一心でした。その落ち着かない精神状態で、自分にはどの治療法が良いのか、この病院で良いのか、という重要な決断を迫られます。担当医に「この治療法が一番良い」と言われても、どうして・・という気持ちが強かった。
”ネットの情報や患者の体験段を聞くこと”、”前立腺癌の場合、ハイリスクでもひと月くらいで、そう病状が変わるわけではないので、あわてなくても大丈夫”・・まあ、これは治療後の今だからわかることなんですけどね。
最新の「小線源治療」では高線量インプラントにより、小線源療法単独でも中間リスク患者の一部まで対応可能で、それ以外の中間リスクに対しては外照射を併用します。さらに高リスクに対しては内分泌治療を加えたトリモダリティーが良い成績を上げているとされます。しかしそのためには高精度にシードを配置する技術が必要であり、習得には多くの経験が必要と聞いています。現在これが可能なのは一部の医療機関のみです。
患者・家族の集い2015東京
2015年11月29日 14時~16時半
講 演:
JCHO東京新宿メディカルセンター 赤倉功一朗先生
体験談:
全摘手術 横山正さん
放射線療法 石原雅広さん
内分泌療法 角田祐一さん
主催:腺友クラブ
後援:NPO法人 キャンサーネットジャパン
会場:ヒューリック浅草橋ビル